2016 Fiscal Year Research-status Report
超高速飛翔体衝突による材料の損傷進展の微視的過程に関するマルチフィジックス解析
Project/Area Number |
16K14499
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
相原 智康 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00231100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超高速飛翔体衝突 / 超高速変形 / 分子動力学法 / 塑性変形 / 相変化 / 金属 / ポリマー / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
スペースデブリ等を想定した超高速飛翔体衝突(~10 km/sレベルの相対速度)による、金属飛翔体と金属被衝突体の超高速変形・弾性波伝搬・破壊・相変化(融解・気化)について、分子動力学法によるシミュレーションと解析ならびに原子毎の物理量を原子レベルでマッピングする可視化を行った。両物体の材質として種々の金属および金属間化合物を対象とするとともに、被衝突体表面に対して種々の角度で飛翔体を衝突させた。これらの計算により、固体中の音速よりも速い塑性変形では進行する塑性領域先端を頂点とした円錐状に弾性波が存在・進展すること、飛翔体による侵徹および被衝突体の損傷の程度はそれらの金属の組成・結晶構造・弾性スティッフネスに依存して変化すること、被衝突体表面に飛翔体が斜めに衝突する場合は飛翔体に回転が生じて侵徹の程度が低くなること、および、3次元衝突モデルの被衝突体の表面では表面波的な変位が長距離で生じることを明らかにした。 また、当初の計画に加えて、高速金属飛翔体の非晶質ポリマー被衝突体への衝突の計算と解析も実施した。金属飛翔体の侵徹中に両者の界面ならびに非晶質ポリマー表面でポリマー分子の特異な構造が形成されること、ポリマー分子には一種の自己修復性が存在すること、および、1 km/sレベル以下の相対速度の衝突ではポリマー被衝突体は比較的高い耐侵徹性を示すことが明らかとなった。これらは、ポリマーの鎖状の分子構造と金属との相互作用を原因としている。 分子動力学シミュレーションから得られる3次元の原子毎の離散型データの格子型データ(連続体量)への変換については、空間をセル分割した後にスーパーセルベースで局所平均を計算する効果的な手法を見いだした。本手法は、3次元高速フーリエ変換とそれに続く逆フーリエ変換の手法よりも高速計算が可能で同等レベルの精度での変換が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績に加えて、研究遂行上重要な以下の知見を得た。 本科学研究費による計算機資源の向上により、従来よりも20倍以上の規模のシミュレーションが実施可能となったので,より適切な分子動力学シミュレーションと境界条件ならびにモデルに必要とされる要素を明らかにする目的で、当初の計画よりも多様な計算条件・モデルでのシミュレーションを行った。これにより、3次元衝突モデルの飛翔体と被衝突体の寸法比は擬3次元衝突モデルのそれよりも大きくする必要があること、10 km/sレベルの相対速度の衝突では平衡系の分子動力学シミュレーションよりも運動方程式の数値積分の刻み幅を十分に小さくする必要があることが明らかとなった。 分子動力学計算データの解析手法について必要とされる要素についても明らかにした。すなわち、衝突過程の初期においては、物体としての重心速度を除外した各原子の運動量を用いることで、飛翔体と被衝突体の両材料の超高速変形・破壊・相変化を適切・効果的に解析・可視化できる。しかし、衝突過程の中期以降については、本手法は十分でなく、その原因が固体中の音速よりも高速に進行する塑性変形と相変化にあると評価した。これより、材料中で原子サイズよりは大きいが局所的な重心速度の影響を除外した各原子の変位・運動量を解析時に考慮する必要があることが判明した。 なお、平成28年度は上述の計算・解析を優先的に実施したため、原子の変位・運動量ベクトルの時空相関から変形・伝搬する弾性波の時空相関の詳細解析を実施するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
超高速飛翔体の持つ高い並進運動エネルギーが熱エネルギーに変換される過程について、上述の局所的な変位・運動量の平均を考慮した解析を行う。これにより、材料の融解・気化等の相変化による熱的ダメージの生じやすさと、材料の組成・結晶構造・組織・物性値との関係を明らかにする。 原子の変位・運動量ベクトルの時空相関から変形・伝搬する弾性波を解析し、飛翔体の運動量が弾性波に変換・伝搬される過程や変形過程を定量化する。 界面構造を含むモデル(複合材料や異種材料を多層化したシールド)について計算する。シールド材料中での温度上昇による相変化や運動量の発生を積極的に利用し、超高速飛翔体の持つ運動量の相殺や効果的な分散がなされるシールドの構造について検討する。 CPUにおける各原子の運動方程式の数値積分計算と、GPUにおける原子に作用する合力の計算(計算負荷が重い)の両方を最適化することにより、分子動力学シミュレーション全体での高速化・最適化・大規模化を図る。
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