2016 Fiscal Year Research-status Report
2波長を利用したレーザー干渉法による熱機関排気ガス温度の高応答計測
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16K14513
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
冨田 栄二 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80155556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱工学 / 燃焼 / 熱機関 / レーザ計測 / 干渉法 / 温度計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 光学系の設計および試作:波長の少し異なる2本のレーザーを用いる.2つの光は重ね合わせて,1本の偏波面保存型ファイバを通り,出口からはほぼ直進光となって出る.この光を,ビームスプリッタによって2本に分けて,1本は試験部を通過させ,コーナーキューブに入る.そこで反射された光は,もう一つのビームスプリッタによって,もう一つの光と重ね合わせる.ビームスプリッタから出る2本の光は,それぞれシリンドリカルレンズで拡大され,レーザー波長に応じた干渉フィルタを通して2台のラインセンサカメラに導かれる.試験部に密度変化が生じると干渉縞が移動する.理想気体の状態式,屈折率と密度の関係を表すGladstone-Daleの式,屈折率と位相変化の関係式(レーザー波長および測定部長さに依存)をもとに密度変化を計算する.すなわち,干渉縞の位相変化(移動量)と圧力を計測すれば,測定部のガス温度変化を見積もることができる.平成28年度は,まず,定容容器内に温度変化を与えて計算通りに温度計測ができることを確認した.次に光学系をエンジンから僅か離すことにより,振動の影響がかなり少ない状態で,干渉縞解析に与える諸影響を調査した. (2)結果:2波長で得られた1サイクルの時系列データはほぼ一致するまでになった.これは干渉縞の解析方法を工夫することによるものである.エンジンのような実機で温度計測をする場合には干渉縞は決して綺麗な状態ではなく,より良いデータ取得はもちろんであるが,その後の解析方法に工夫が必要であり,ノウハウの蓄積が必要である. (3) 課題の検討:実際にデータを取得すると,干渉縞の間隔が一定ではなく時刻ともに多少変化する.よって,各時刻ごとに干渉縞の間隔をもとにして位相差を算出する必要があることが分かった.また,フィルタのわずかな傷なども含めて光ノイズの影響も解析の際に影響があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,定容容器内での温度変化計測に続いて,光学系をエンジンからほんの少し離して振動の影響をかなり軽減した状態でデータを取得し,干渉縞解析において,何が問題になるかという課題に関して,かなり,明確に把握することができた.すなわち,2波長レーザ干渉法によって,それぞれの波長から得られたデータを比較,検討することにより,現在,ほぼ同じ温度が算出することができたので,解析方法に関してはかなり信頼性の高いものになった.まだ,課題はあるが,解決の糸口は把握できており,平成29年度の初めには解決できると考えられる.計画よりもほんの少し遅れているが,十分挽回できることが可能であり, まずまず順調に進んでいると思われる.学会発表はまだであるが,平成29年度には発表予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
試作したセンサー部のハウジングを排気管出口に取り付けて,エンジンを運転し,データを取得する.エンジンのシリンダヘッドと排気管の間に,製作した光学系を設置する.運転条件としては,点火時期を変化させながら,何通りかの負荷,当量比条件で実験を行う.本手法は密度変化を計測するので,排気管内圧力履歴も同時に計測して,温度変化を算出する. 計測誤差を与える原因としては,まず,振動の影響がある.振動の影響に関しては,光学系の再検討,レーザ光導入部の取り付け方法など,対策は考えている.その他にも,すすや水蒸気の光学窓への付着の影響等の外乱の影響などがあるが,本エンジンでは予混合で燃焼させるのですすの排出は少ないと思われ,水蒸気の影響に関しては暖機運転後に計測するなどの対策を考えている.その他にはH28年度に判明した干渉縞の読み取り方法に関する種々の補正方法の検討が課題である. 二波長式の利点を生かすことによって,干渉縞の山飛びが生じた場合でも温度変化を算出することができる.現在のシステムでは連続した2サイクルしかデータを取得することができないが,山飛び解析を実施することによって,1サイクル中のデータ点数を減らすことができ,連続10サイクル程度の解析は可能になると考えられる. 温度変化のデータを連続10サイクル取得することができれば,排気ガス温度変化に及ぼす燃焼のサイクル変動の影響に関しても議論することができる.シリンダ内圧力変化およびそれから得られる熱発生率と,排気ガス温度履歴の関連についても非常に興味のあるところである.
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Causes of Carryover |
平成28年度に使用した金額は,計画した予算よりもやや少なくなったので,平成29年度に回すことになった.これは,実験のほうよりも,解析ソフトの精度向上に力を入れたために,実験で必要なトライアンドエラーの部分が少なくなったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,光学系の再製作や,光学部品の表面精度向上や表面処理などのための費用が必要であり,少しトライアンドエラーの部分があり,何度か実験結果を見ながら,製作および購入することになる.
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