2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14518
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
赤松 友成 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (00344333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水中音響 / 音響校正 / 低周波音 / 船舶騒音 / エアガン |
Outline of Annual Research Achievements |
海中騒音が海洋生物に与える影響が世界的に懸念されている(Boyd et al. 2011)。この影響評価において、根幹となる低周波音響校正が困難であった。本研究では、日本の静穏な湖水で特殊な条件を満たす音波を発し、1名でも運用できる高精度校正システムを構築する。 静穏で、水中低周波音の校正に適した湖を特定する。水底からの多重反射を回避するためには深い湖であることが必須である。大型鯨類や魚類の典型的な鳴音の波長15m (100 Hz)を想定すると、水底からの往復で波長の10倍となる水深は75mであり、これ以上深い湖水は全国に15ある。このうち、動力船の運行が限られている北海道の倶多楽湖と動力船が運航している支笏湖で背景雑音レベルを計測した。 倶多楽湖の静穏性が際立っていた。動力船が運航されていた時の支笏湖のスペクトルレベルは、倶多楽湖に比べ20dB程度大きかった。また、周辺での動力船の運航が確認されなかった時間帯でも支笏湖では100Hzから1kHzまでの帯域に騒音の混入が認められた。遠方の小型船や桟橋の付帯設備などが音源と考えられた。 直径約2kmの倶多楽湖内の14点で、水深5mの背景雑音を22kHzまでの帯域で記録した。左図は、100Hzにおける計測例である。各点の測定値は補間して二次元表示した。その結果、どの地点でもきわめて低い雑音レベルが確認され、倶多楽湖が低周波音響校正に適した湖であることが判明した。 海中の背景雑音の典型例としてよく知られるWenz curve [Wenz 1962]の100 Hzから1kHzのスペクトルレベルは60-80 dB/√Hzであり、本計測の45-55dB/√Hzは淡水魚で最も感度が良い聴覚スペシャリスト種の可聴限界に近い。多くの海産魚は音の存在を感じられないほど静穏であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非動力船を用いた静穏なプラットフォームにより、静穏な湖での騒音マップおよび平均的なパワースペクトルの情報を得ることができた。当所計画で想定していた湖はいずれも静かで、動力船が運航されていた北海道の支笏湖に比べ、格段に静穏であった。
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Strategy for Future Research Activity |
特定された静穏湖水における精密校正システムを構築する。水中スピーカー(US-300, UETAX, 新潟)と、あらかじめ感度特性がわかっている水中マイクロホンを、船上から垂下する。まず、 水中マイクロホンの水深を変化させながら受信レベルを計測し、水面反射音による干渉下での安 定音場領域を実測する。次にこの安定音場領域の中に水中マイクロホンを固定し、異なるレベル の印可電圧でスピーカーを駆動し送信系の応答特性を確認する。船舶動揺や水中マイクロホンの位置を安定音場領域内におさめるシステムを構築し、低周波領域での再現性のある音波の送受信を可能にする。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入価格の節約に努めた結果、予定額に比べ若干の支出減となったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予定していた使用計画に大きな変更はない。引き続き支出の節減に努め、多くの成果を挙げられるよう予算を有効に活用する。
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