2017 Fiscal Year Research-status Report
動的な合金化プロセスによる高温溶融アルカリ金属の瞬時不活性化に関する研究
Project/Area Number |
16K14526
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
近藤 正聡 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435519)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液体金属 / アルカリ金属 / 合金化反応 / 核融合炉 / 高速炉 / 安全性 / 熱拡散率 / TDS |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉の液体燃料増殖材やIFMIFの液体ターゲット、高速炉の冷却材として、溶融アルカリ金属(リチウム(Li)やナトリウム(Na))の応用が期待されている。しかし溶融アルカリ金属は酸素や水と反応して燃焼するため安全上の課題がある。本研究では、溶融アルカリ金属漏洩事故時の対策技術として、合金プロセスを応用した安定化手法として、従来の窒息消火法とは全く異なる独創的且つ斬新なメソッドに挑戦している。 H28年度は、Liに対してPbを投入して合金化・安定化させるプロセスにおいて形成されるLiリッチな鉛(Pb)-Liについて研究を実施した。核融合炉の液体燃料増殖材として期待され、既に研究が実施されているPb-15Li合金(Li濃度15mol%)に対して、約2倍のリチウム濃度のPb-28Li, 更に3倍のリチウム濃度のPb-45Liの合成を行った。また、これらの合金の化学的安定性、材料共存性、不純物の吸放出挙動、大気環境下反応性を明らかにした。 H29年度は、合金化プロセスにおける酸素や水、二酸化炭素等の環境非金属不純物の影響について調べた。合金化反応に対する環境中不純物の影響を調べる上で、(a)減圧環境下において高純度Pb(純度99.99%以上)を用いて反応させる条件と、(b)アルゴン雰囲気中において水や二酸化炭素、酸化物等の不純物を多く含む鉛を用いて反応させる条件、の2パターンを調べた。前者の条件で合成した合金について、その熱拡散率を計測したところ後者のものに比べて28%程度大きい事が分かった。これは、リチウムが非金属不純物等により酸化する事なく、合金構成元素として優れた伝熱性能を発揮したためであると思われる。これにより、リチウム漏洩時における合金化プロセスを考えると、純度の高い鉛を散布して合金化させる事により、漏洩液体金属の効率的な放熱と温度低下を期待できる事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核融合炉液体ブランケットの分野において、リチウム(Li)濃度が15-17mol%の鉛リチウム合金(Pb-15Li, 融点235℃)の材料共存性、水素保持特性などが調べられてきた。しかし、この組成以外の合金の特性に関しては殆ど調べられていない状況である。これまでに、従来のLi濃度の2倍の28mol%及び3倍の45mol%のPb-Li合金の合成に成功し、その化学的安定性、材料共存性、不純物の吸放出挙動、大気環境下反応性などの様々な特性を獲得する事に成功している。これらの合金は、本研究がターゲットとする高融点合金(Li7Pb2, 融点726℃)に比べると、融点が約320℃(Li28mol%)、約480℃(45mol%)と低いが、合金の特性に対するLiの影響を評価するうえではパラメーターとして十分な範囲といえる。グローブボックス内で達成可能な500℃以下の温度でも液体として用いる事が可能であり、様々な特性試験に供するための試験片作成を順調に行う事ができている。H29年度に関しても、緻密なペレット形状のサンプルの用意が必要な熱拡散率測定に成功しており、不純物が合金化反応に与える影響に加え、化学的特性および熱的特性へ与える影響に関しても明らかにした。以上の研究成果に関して、核融合エネルギーフォーラムの吉川允二核融合エネルギー奨励賞を受賞した。一方、LiとPbの動的反応実験については、実験実施に必要な反応容器の製作が完了し、グローブボックス内への設置が完了し、当初想定していた動的な合金化試験を進めている状況にある。これまでに順調に進んだ合金の物性研究に加え、動的な合金化試験を完了し、体系的なモデル評価を行うため、来年度1年間の期間延長を申請した。継続して研究成果の発表も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は2年間の計画であったが、研究を進める上で得られた鉛リチウム合金の特性や物性が従来のものと大きく異なり、化学的な考察を深めた事により、鉛とリチウムの合金化という単純なプロセスの中にも不純物制御や物性変化など様々な新規性の高いトピックスを発掘する事ができた。不明であった点が多く明らかになったが、瞬間的な合金化反応機構に関しては未だに未解明な点も多い。そのため、1年間の研究期間の延長を申請した。これまでに積み上げてきた鉛リチウム合金の特性評価の結果と、来年度得られる動的合金化試験の結果を体系的にモデリングし、動的合金化反応を応用したアルカリ金属プラント漏えい事故時の対策技術として、技術実装に向けた考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初は2年間の計画であったが、研究を進める上で得られた鉛リチウム合金の特性や物性が従来のものと大きく異なり、化学的な考察を深めた事により、鉛とリチウムの合金化という単純なプロセスの中にも不純物制御や物性変化など様々な新規性の高いトピックスを発掘する事ができた。不明であった点が多く明らかになったが、瞬間的な合金化反応機構に関しては未だに未解明な点も多い。多くの予算は必要とはしないものの、研究を体系的に広くカバーするために、1年間の研究期間の延長を申請した。来年度に実施する実験に必要な研究費用を次年度に繰り越す事とした。また、得られた研究成果に関して積極的に研究発表も行う予定である。
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Remarks |
成果に関連して平成29年度吉川允二核融合エネルギー奨励賞を受賞した。
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Research Products
(8 results)