2016 Fiscal Year Research-status Report
熱平衡原子法による放射性セシウムの高効率レーザー同位体分離のコールド試験
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16K14538
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松岡 雷士 広島大学, 工学研究院, 助教 (50455276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子・分子物理 / 原子法 / 連続発振レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は放射性セシウムの高温での高速フロー分離処理が可能なレーザー同位体分離法の開発を目指した研究であり、理論研究とコールド試験(放射能を使わない実験)の範囲で数年後のホット試験(放射能を使用する実験)への基盤を作ることを目的としている。 まず理論研究の基盤として、セシウム・希ガス間の原子間ポテンシャルを第一原理計算によって算出した。ヘリウム・ネオン・アルゴンについて行われている既往の研究から基底関数の拡張を行い、既報には無いクリプトン、キセノンも含めた全ての希ガスについて同等のレベルで結果を得た。 独自に算出した最新の原子間ポテンシャルに基づき、本研究の同位体分離の原理となる光誘起ドリフト速度の励起レーザー周波数依存性を算出した。原子間ポテンシャルから原子速度に依存した衝突断面積を導出し、レート方程式の近似解析解を利用して各同位体に対する原子の平均速度を得た。ガス種、希ガスの圧力、温度などを系統的に変化させて数値解析を行った結果、いくつかの仮定の下ではあるが、安定セシウムCs-133と放射性セシウムCs-135を年間100グラムのオーダーで分離できる条件を定量的に導出した。 理論研究と並行して、コールド試験のための真空容器と半導体レーザーシステムの開発を行った。セシウム源としてセシウムのビスマス合金を用いることを想定し、大電流に耐性のある電流導入端子を作成した。レーザーシステムとしては速度計測のトリガに用いるレーザーを開発し、セシウムの吸収に波長を安定化する装置を作成した。続いて共鳴しない超微細構造にポンプされてしまう原子をリポンプするための高出力レーザーの開発を行った。500 mWの高出力半導体レーザーを使用したため、熱の影響によって当初40 nmを超える波長シフトが観測されたが、冷却機構を改善することで852 nm の波長出力が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論研究については想定以上の成果が創出されたが、実験研究に遅れが生じている。実験のための真空容器作成の段階で、コンパクトな構造の電流導入端子の開発に想定以上の時間とコストがかかった。またその影響がレーザー開発の遅れにも波及した。現在は研究進捗の遅れにつながった問題は全て解消されている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず開発が遅れている波長安定度の高い分離用のレーザーの開発を行う。当初は干渉計のシグナルを利用して波長安定化を行う計画であったが、予備実験と理論計算の結果を検討して計画を修正し、分離レーザーの使用予定波長範囲において安定したエラーシグナルが得られる Dichroic Atomic Vapor Spectroscopy を用いた波長安定化システムの構築を行う。 並行してセシウム原子の光誘起ドリフト効果の観測を行う。真空容器にガラス管を取り付け、セシウム合金を電流印加により加熱してセシウム原子をガラス管に導入する。既に完成した速度計測トリガー用のレーザーを用いてセシウムガスに対して光誘起ドリフトを発生させ、並進速度の変化による発光分布の偏りをまずは目視で観測する。温度は常温付近に設定するが、ガス種と圧力は系統的に変化させて試行錯誤を行う。この時点でまずは定性的に理論研究の妥当性を検証する。 光誘起ドリフト発生条件の検証として、独自に開発した飽和吸収分光による衝突頻度の計測も必要に応じて行う。信号形状と衝突頻度の相関については既に理論研究を進めており、飽和吸収信号の高圧での変化によって光誘起ドリフトが発生する状態を計測できる見通しが立っている。 光誘起ドリフトの定性的な観測を行ったのち、ドリフト速度の計測を行う。トリガーレーザーによってセシウム原子の流れをパルス化し、分離レーザーによって発生するセシウムのドリフト速度を発光、もしくはレーザー吸収によって計測する。独自の理論研究と結果を比較し、理論研究の妥当性の検証とモデルの改善を行う。
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Causes of Carryover |
年度末(3/17)の出張旅費の確保を行っていたが、旅費確定の時点で少額の残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高出力レーザー素子の冷却のために必要な少額加工品作成のために使用する。
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Research Products
(6 results)