2016 Fiscal Year Research-status Report
凝固相剥ぎ取りによる超高速熱交換潜熱蓄熱システムの開発
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16K14543
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸岡 伸洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40431473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
埜上 洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50241584)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 潜熱蓄熱 / 高速熱交換 / PCM / 剥ぎ取り / 界面制御 / 伝熱促進 / エネルギーカスケード利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会全体でエネルギーを有効利用するための一方策としてエネルギーのカスケード利用が挙げられる。カスケード利用とは複数の工業プロセスや一般家庭の間で、最も高温で稼働するプロセスにエネルギーを投入し、ここから排出される排熱をプロセスの稼働温度に応じて順次低温側に輸送して利用することで、全プロセスで使用するエネルギーの総量を低減する方法である。エネルギーをカスケード的に利用するためには、プロセス間でのエネルギーの輸送や蓄熱が必要であるが、その都度にプロセスから排熱を回収し、それを輸送・蓄積媒体に移動させる操作が必要となる。このため、熱回収操作の効率はカスケードシステム全体でのエネルギー利用効率を律する重要な因子であると考えられる。本研究では、相変化物質(Phase Change Material, PCM) 溶融時の潜熱を利用して高密度に熱貯蔵する「潜熱蓄熱法」に着目した。従来の潜熱蓄熱法のうち間接接触熱交換式の場合は、放熱時に伝熱面に生成する凝固相がわずか1 mmの厚みでも総括伝熱係数が1/3になるほどの大きな伝熱抵抗を示すため、放熱時の熱交換速度が遅いことが問題である。実用化のためには蓄・放熱速度の高速化が必要であり、図3に示す伝熱管表面の凝固層を回転伝熱管および固定羽根により機械的に剥ぎ取る、「PCM凝固層剥ぎ取り型高速熱交換潜熱蓄熱槽」を提案・開発した。PCM搭載量1 kg規模試験装置を開発し、放熱速度を評価した結果、本機構により無回転時と比較して約30倍の放熱速度の向上を達成し、蓄熱した熱量の約80%を放出するまでその特性を維持することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)装置開発:アクリルおよび銅製伝熱管を組み合わせた内部観察可能な小型の装置の開発を完了した。 2)放熱速度:PCMの凝固・剥ぎ取り現象の直接観察、熱交換速度を評価した。放熱速度に及ぼす回転数の影響を明らかにし、学会において5件の成果報告、特許出願を行った。 3)蓄熱速度:蓄熱初期はPCMの棚吊りが起きるため回転による効果が発現しないが、棚吊り解消後は迅速に溶解することを明らかにした。これは当初想定していた蓄熱機構とはことなり、引き続き詳細に検討予定である。 4)数値計算:OPENFOAMを用いた数値計算コードを開発し、凝固剥ぎ取り、流れ場の解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の成果により、放熱時は円管表面に生成した凝固相の剥ぎ取り速度が重要であることが明らかになった。この剥ぎ取り速度は2016年度に調査した回転数だけでなく、固定羽根の枚数の影響も強く受けると考えられるため、2017年度は羽根枚数の効果を検討する。 蓄熱速度向上のための機械的な工夫や溶融メカニズムの解明をその場観察を併用しておこなう。 申請時には初年度の結果に基づいた2号機を作成予定であったが、2016年度の成果により、内部観察可能な装置を用いた詳細な検討が引き続き必要であると判断し、現行装置を用いて放熱速度、蓄熱速度向上に寄与する因子の洗い出し、最適化、数値計算との合わせ混みを重点的に行う。
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Causes of Carryover |
想定と異なる実験結果が得られたため、結果の解釈および解決策の抽出に時間を要したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の成果を元に、温度計測、観察部分を増強し、より精緻なデータの収集を行う。また、アクリル製の模擬装置を開発し、内部流動の可視化および数値計算との合わせこみによる最適化を行う。
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