2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14548
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋葉 悦男 九州大学, 工学研究院, 教授 (90356345)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素化物合成 / Mg系水素化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次電池の更なる高性能化、特にエネルギー密度の向上を図るために、以下の式で示されているMg水素化物(MgH2)をLiイオン二次電池へ応用することが提案されている(Y. Oumellalら(2008))。 MgH2 + 2Li = 2LiH2 + Mg しかしながら、左辺から右辺へのMgH2+Liの反応は進行することは確認されているが、速度と反応の進行度に課題があるとされている。MgH2とLiの反応は固体反応であるので、反応速度と進行度にはミクロ・ナノ構造による影響が極めて大きい。そのため本提案では、MgH2のミクロ・ナノ構造制御によってLiとの反応を加速して電池用材料として適した材料創成を目指す。本年度は、Mg系材料として、滑り面の数が少なく加工しにくいMg純金属ではなく滑り面が多く軽量なMg-Li合金、高容量が期待され経験のあるMg-Ti準安定合金を当初検討した。しかしながら、反応速度およびサイクル特性に課題があることが分かり、それらの問題の比較的少ないMg2FeH6を対象として選択した。Mg2FeH6は、Mg2Feが安定に存在しないため合成に高圧水素雰囲気および高温での長時間維持が必要な事が知られているので、合成条件を最適化した。出発物質としてMgH2粉末とFeを選択し、12時間のボールミルにより粉砕・混合した後に水素雰囲気下で焼結した。その結果、合成温度420℃、水素圧力8MPa、焼結時間48時間の行程を12時間のボールミルをはさんで二回繰り返すことによって、収率90wt%でMg2FeH6を得ることに成功した。この条件は、M. Retuertoら(2010)が750℃、2GPaの条件下で最大で83wt%の収率であったことと比較して、遙かに穏和な条件でより高い収率を得ることができたと言える。Mg2FeH6の合成に関する論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MgH2とLiの反応について検討したが、先行研究によると反応速度およびサイクル特性に課題があることが分かった。そこで、Mgを主成分とする材料に検討の範囲を広げ、加工性に優れ軽量なMg-Li合金および報告者が世界で初めて開発した高い容量が期待できるMg-Ti準安定合金を検討対象とした。現在、フランスのCNRSがこの系について研究を進めているので、非公式な情報交換を行いMg-LiおよびMg-Ti系について、いずれもサイクル特性に課題があり本研究の期間ではその対策に十分対応できないと判断した。Mg2FeH6は高い容量を期待でき、遷移金属であるFeを含むので反応速度とサイクル特性に期待が持てると考え、その合成に取り組んだ。Mg2Feは安定な金属間化合物として存在しないので、MgH2とFeから直接合成する必要があり、そのためには極めて高い水素圧力と高温の焼結条件が必要とされていた。本研究に用いる事の出来る装置ではそのような高圧および高温を達成することが出来ないため、穏和な条件での合成に挑戦し、90wt%の収率を得ることに成功した。収率の解析には当初の予定通りにX線粉末回折データのリートベルト解析法を用いた。 本研究の進捗は以上のように進めてきたが、当初は文献調査と外部との情報交換によりMg単体の適用が二年間の研究期間では困難であると思われたが、最終的にはMg系水素化物であるMg2FeH6の採用により当初よりも反応速度およびサイクル特性において高性能化を図る可能性が得られた。従って、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Mg水素化物(MgH2)をLiイオン二次電池へ応用することが提案されている(Y. Oumellalら(2008))。その反応である MgH2 + 2Li = 2LiH2 + Mg の左辺から右辺へのMgH2+Liの反応の速度と反応の進行度に課題があるとされている。Mg系材料として、滑り面の数が少なく加工しにくいMg純金属ではなく滑り面が多く軽量なMg-Li合金、高容量が期待され経験のあるMg-Ti準安定合金を当初検討したが、反応速度およびサイクル特性に課題があることが分かり、それらの問題の比較的少ないMg2FeH6を対象として選択した。 本年度、Mg2FeH6を我々の所有する装置の持つ水素圧力および温度条件の範囲内である合成温度420℃、水素圧力8MPa、焼結時間48時間の行程を12時間のボールミルをはさんで二回繰り返すことによって、収率90wt%で得ることに成功したので、最終年度である来年度は合成したMg2FeH6を用いてLiとの反応を試みる。全固体電池を見据えて、超イオン伝導体であるLiBH4との反応についても確認を行う。さらに、来年度後半には平成28年度に購入した電気化学測定装置を用いた電気化学反応評価を行う事としている。 また、Mg2FeH6の穏和な条件での合成について国際学会における口頭発表および論文による報告を行う。
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Causes of Carryover |
Mg単体では当初の目的を研究期間内に達成することが難しいと研究開始後に判ったため、適切なMg系材料の調査および材料系の選択、更にはその合成に注力したため、必要とする費用が当初計画よりも少ない結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Mg系材料の合成条件の最適化に成功したので、その材料を用いて、Liとの反応の実験を強力に推進する。また、電気化学的測定については、平成28年度に購入した電気化学計測装置を活用して、平成29年度後半に行って取りまとめを進める。 海外で開催される国際学会などで成果の発信に努める予定である。
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