2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14557
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
眞部 寛之 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (80511386)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 摂食 / 嗅皮質 / 電気生理学 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物にとって嗅覚は、食物の探索・識別や捕食者の発見など、生存のために必須の感覚である。嗅覚研究は、嗅細胞からの軸索が直接投射する嗅球での情報処理の基本ロジックは明らかとなってきたが、嗅球からの情報が統合される嗅皮質での機能はほとんど不明であり、嗅覚情報処理機構の全容を明らかにするためには嗅皮質の機能解明が必須である。 解剖学的に嗅皮質は多数の亜領域から構成されているが、それぞれの機能に関しては不明である。我々は、嗅皮質の1領域であるTenia Tectaからニューロン活動を記録し、この領域に、マウスが匂いを手掛かりとした摂食行動中に応答変化させるニューロン群が存在することを突き止めた。Tenia Tectaは視床下部外側部に直接投射しているとの文献があり、匂い入力を摂食行動に変換させる重要な回路であると推察された。 視床下部外側部より逆行性トレーシングを行ったところ、Tenia Tectaニューロンはほとんど染まらず、すぐlateral領域のニューロンが染まった。このニューロン群をさらに詳しく調べたところ、これまで解剖学的に確立されていない新たな領域に存在するニューロン群であることが分かった。この領域は嗅球からの直接入力を受けるため、嗅皮質と分類できる。また、Tenia Tectaからも入力を受けると考えられる。当初の予測とは異なったが、この新しく見つかった嗅皮質領域(嗅皮質X)から視床下部外側部へ直接投射するニューロン群が、匂い入力を摂食行動に変換する回路上で重要な役割をしていると考えられる。ニューロンの応答パターンから、Tenia Tectaも本回路上で重要な役割をしていると考えられ、今後は、この2領域の機能解析を進めていき、摂食行動をトリガーする嗅覚入力の脳内回路機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、マウスを用いた匂いを手掛かりとした摂食行動系の確立、光遺伝学的手法の導入、光遺伝学と電気生理学を融合させた細胞同定法の技術の確立を行った。また、当初の予測とは異なっていたが、嗅皮質から視床下部外側部に直接投射するニューロン群を同定した。嗅皮質から視床下部外側部に直接投射するニューロン群が、匂い入力を摂食行動に変換する上で重要な役割をしていると推察されるため、このニューロン群を同定できたことは今後の研究遂行上重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅皮質Xから視床下部外側部へ投射するニューロンの解剖学的性質に関して、さらに詳細に解析する。また、光遺伝学的手法と電気生理学的手法を融合させた方法を用い、嗅皮質Xに存在する外側視床下部外側部に投射するニューロン群の、匂いを手掛かりとした摂食行動時における応答様式について詳しく調べる。Tenia Tectaニューロンの応答様式と比較し、回路機能を明らかにする。また、光遺伝学的手法を用いて、嗅皮質Xから視床下部外側部に投射するニューロン群を特異的に刺激または抑制し、匂いを手掛かりとした摂食行動にどのような影響が出るかを詳しく調べる。さらに、Tenia Tectaニューロンにも同様の手法を用いることで、Tenia Tectaと嗅皮質Xが匂い入力を摂食行動に変換する脳内回路上でどのような役割をしているのかを明らかにする。
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