2016 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms linking emotion and body temperature
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16K14558
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
小早川 令子 関西医科大学, 医学部, 教授 (40372411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情動 / 先天的恐怖 / 嗅覚 / 体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
古来より体温はヒトや動物の体の状態を表す指標であると考えられている。恒温動物では体温はある一定の温度に保たれるが、睡眠―覚醒サイクルに合わせた体温の日周変動や、冬眠する動物での低体温状態の維持など、恒温状態から体温が外れる現象はさまざまに存在している。また、体温を低下させる向精神薬はそう状態を改善し、逆に、体温を上昇させる向精神薬はうつ状態を改善する傾向があることから、脳の温度と情動状態との関連するという仮説が提案されている。体温は何らかのメカニズムにより変動し、その変動が精神状態に影響を与えていると考えられるが、その実態は未解明である。 私たちは匂い分子が誘発する行動や情動の制御メカニズムの解明を目指した研究を実施してきた。一般に、生理活性を持つ匂い分子は自然物の中から同定されてきた。これに対し、私たちは、天然成分の化学構造を最適化するという独自のアイデアで、極めて強力な先天的Freezingを誘発する匂い分子群「恐怖臭」の開発に成功した。情動は行動と生理応答を指標に測定できる。恐怖臭を嗅がせるとFreezing行動以外に背筋を中心とした体表面と体深部の3℃もの低下が誘発される。この変化はマウスを身動きできない条件で閉じ込めることでも誘発される。一方で、後天的な恐怖条件では逆に体温の上昇が誘発される。このことから先天的と後天的な恐怖情動はそれぞれ体温の低下と上昇によって区別できる可能性が示唆される。これまで感覚入力と体温を結ぶメカニズムは未解明である。本研究では感覚入力、脳の中枢部の情報処理、体での体温制御の3つのレベルに関与する細胞や分子ターゲットの解明を目指した研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テキサス大学との共同研究によりマウスのフォワードジェネティクススクリーニングを実施し、恐怖臭が誘発するFreezing行動の制御に関与する感覚受容分子の同定に成功している。恐怖臭が誘発するFreezing行動は強力でかつ個体差が殆どないためにこのようなスクリーニングが実施できたし、ターゲット遺伝子を同定することにも成功した。当初の研究計画通り、ここで同定した感覚受容分子が恐怖臭が誘発する体温の低下にも関与している可能性を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先天的恐怖に伴う体温低下を制御する中枢の細胞や分子を同定するとともに、先天的恐怖に伴う体温低下を誘発する熱産生組織の分子メカニズムの解明を進める。
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