2016 Fiscal Year Annual Research Report
Neural circuit mechanism to determine hippocampal brain state
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16K14562
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 康紀 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (90466037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セロトニン / 縫線核 / 記憶学習 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬における脳状態は規則的なθ波期、不規則な鋭波期の2つに大別できる。これは情報処理に密接な関わりがあり、動物が活動している時に見られるθ波期は外界の情報が大脳皮質を介して海馬に入力している時期であり、様々な情報を統合していると考えられる。一方で、静止期に見られる鋭波期は統合された情報を大脳皮質に出力している時期と考えられている。記憶の固定化に必要な海馬活動もこの時期に起こると考えられる。しかし、この2つの脳状態がいかに制御されているかは分かっていない。以前の研究結果で、我々は、縫線核から海馬への投射線維がθ波期に一致して活性化されることに気づいた。また、その投射先の一つである抑制性神経細胞もθ波期に発火する。このことから、我々は縫線核からの海馬への入力が脳状態をθ波期、あるいは鋭波期に規定していると仮説を立てた。 これを実証するため、本実験ではマウス正中縫線核にG-CaMP6をAAVベクターを用いて発現した。正中縫線核からのセロトニン神経軸索は海馬に終止する。海馬を観察するため、大脳皮質の一部を取り去り海馬を露出した上で光学窓を設けた。軸索へのカルシウム流入を二光子顕微鏡で観察した。マウスはトラックボール上を自由に歩行し、その行程はコンピューターマウスを用いて検出し仮想現実空間を動かした。マウスが特定の場所に来ると報酬が与えられた。その結果、縫線核から海馬への投射線維は歩行開始時(つまりθ波期の開始)に一致するものと報酬に一致するものの2種類の集団があることがわかり、その比率は約9:1であった。 次に、海馬へ投射する縫線核からセロトニン神経の機能を探るため、チャネルロドプシンを縫線核セロトニン神経に発現した上で海馬に光ファイバーを挿入し、局所に投射する線維の刺激を行なった。その結果、報酬における歩行速度が遅くなり、報酬の情報を強化しているのではないかと想定された。
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