2016 Fiscal Year Research-status Report
順行性ウイルスベクターを用いた知覚神経回路形成機構の解析
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16K14564
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花嶋 かりな 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, チームリーダー (80469915)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 神経回路形成 / 経シナプストレーサー |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な結合様式をもつ脳神経回路の動作原理を理解する上で、目的遺伝子の発現を操作するシナプス移行型のトレーサーは有用なツールである。しかしながら投射標的細胞に移行して遺伝子の発現を操作する、順行性型の経シナプストレーサーについては現在まで汎用性のあるものが確立されていない。本研究では、改変型水泡性口内炎ウイルス(VSV)を用い、生体での簡便かつ特異性の高い順行性経シナプスウイルストレーサーを確立することを目的としている。本年度はVSVをコードする5つの構成遺伝子のうち、GタンパクとLタンパクの間にGFPを挿入したVSV-GFP、およびGFP領域にmCherry-Cre配列を挿入した新規のCre導入型ウイルスを作製し、ウイルスの産生効率およびCre酵素活性について解析を行った。並行してこれらのウイルスの新生児マウスへの感染手法および感染効率についても検討を行った。特に網膜に感染させたVSVによりCreが視床へ到達すると、Cre依存的にレポーターの発現が確認され、本システムが生体内における解析に有用であることが示された。これらと並行して既存のtTAマウス系統との交配により、胎生18日目の大脳皮質でのGFPの発現レベル、TeNT活性化によるVAMP2切断と発現量減少についても確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により改変型水泡性口内炎ウイルスが順行性型の経シナプストレーサーとして有用であることが示されたが、一方でこれまでの成体での解析手法とは異なり、生後早期のマウスへのウイルス導入については感染の時間的スケールおよび毒性についての調整が今後の検討課題であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析から1週間を超える長期解析においては、標的細胞での細胞毒性が問題となることが予測された。そこで今後これらの問題を克服するために変異型ウイルスベクターの開発を行う。別の報告より、VSVの構成遺伝子のうち、2つの遺伝子に対して数カ所の点変異を導入することで、培養細胞でVSVの細胞障害性が低減されることが報告されている。そこで生体レベルで点変異を導入することにより、VSV本来の機能は維持したままで細胞障害性のみを低減するウイルスの作製を行なう。VSVを生後早期に感染させた実験はこれまで報告がないが、一方で成体と比較し幼若期マウスではインターフェロン産生によるVSVの不活性化が低減されることが予測され効率的な遺伝子発現が誘導できることも考えられている。
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Causes of Carryover |
本年度の解析結果から、生後早期のマウスの長期解析においては、標的細胞での細胞毒性が問題となることが予測された。そこで当初予定していた実験計画に加えて、細胞毒性緩和の問題を克服するための変異型ウイルスベクターの開発を行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は標的細胞での細胞毒性を緩和するための変異型ウイルスベクターの開発に向け、新たにクローニング用試薬と感染実験の条件検討に用いる組織化学実験用の消耗品試薬を購入する予定である。またデータの信頼性を確保するために、感染後の経時的遺伝子発現について、複数のタイムポイントを行うために使用する実験動物数についても増やす必要が生じる。
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Research Products
(3 results)