2016 Fiscal Year Research-status Report
新規SUMO化動態制御機構を介したシナプス伝達調節
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16K14583
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 博紀 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (40568854)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SUMO / SENP5 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
SUMO化はタンパク質機能を制御する翻訳後修飾の一種であり,近年,がんや神経変性疾患などとの関連も指摘され,注目を集めている。タンパク質のSUMO化状態は,リガーゼによるSUMOの付加とペプチダーゼによる除去のバランスによって決定されると考えられてきた。しかしながら申請者らは,酵素活性を持たないことが予想されるSENP5の新規アイソフォーム(SENP5 short)のクローニングに成功した。すなわち,酵素活性に依存しないSUMO化動態の制御が行われている可能性がある。本研究課題ではこの可能性を検証し,SUMO化動態制御の理解に新たな枠組みを提供すること,さらに,この新規SUMO化動態制御機構がシナプス機能に及ぼす影響を解明することを目的とする。 平成28年度は,SENP5 shortの性質解明を試みた。Neuro2a細胞にGFP,SENP5 short,またはペプチダーゼ活性を持つ従来型のSENP5(SENP5 long)とHA-SUMO3を発現させ,タンパク質SUMO化状態を解析したところ,SENP5 shortを発現させた群で最もSUMO化が亢進していた。すなわち,SENP5 shortは内在性の脱SUMO化経路と競合することが示された。SENP5 longはSUMOのC末端を切断し,GGを露出させることで結合可能な成熟型SUMOを産生する。SENP5 shortと共に成熟型SUMO(HA-SUMO3-GG)または未成熟型SUMO(HA-SUMO3)を発現させ解析したところ,両群にSUMO化状態の違いが見られなかったことから,SENP5 shortはSUMO化過程とは競合しない可能性が高い。 また,SENP5に対するノックダウンベクターを作成し,効果を確認した。さらに,今後の解析に必要なα-tubulinやDrp-1の発現ベクターを準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で最も重要な「SENP5 shortによる酵素活性に依存しないSUMO化動態制御機構の存在を立証する」という課題がおおむね達成できたため。さらに,新規アイソフォームであるSENP5 shortが脱SUMO化とは競合するがSUMO化とは競合しないという結果は,今後の研究結果解釈,生理機能の推測に非常に重要な発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
SENP5 shortによって内在性の脱SUMO化経路が競合的に阻害されることが示された。そこで,当初の計画通り,SENP5 shortによるSUMO化動態制御がシナプス機能に及ぼす影響を解析する。神経細胞活動に応じたシナプス小胞の開口放出の測定には,胎子マウスから調製した海馬あるいは皮質神経の初代培養細胞(2から3週間程度培養し,機能的なシナプスが形成されたもの)とFM色素を用いる。さらに,可能であればSypHy等のプローブを用いたライブイメージングにより,開口放出への影響を解析する。また,SENP5がミトコンドリア外膜に局在すること(未発表データ),Drp-1のSUMO化状態を調節することから,ミトコンドリア依存的な細胞機能にも影響を及ぼす可能性がある。そこで,シナプス伝達の他,神経細胞極性形成や樹状突起の分枝形成への影響も解析対象とする。いずれの解析においても,SENP5 longあるいはshortの強制発現系を用いるが,必要に応じて,両アイソフォームをノックダウンした後に片方のアイソフォームを発現させる方法を採用する。
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Research Products
(1 results)