2016 Fiscal Year Research-status Report
サル免疫系を持つマウスの作製ーウイルス感染病態解明のための新規小動物モデルの開発
Project/Area Number |
16K14593
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊吹 謙太郎 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00273524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 智行 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (40202337)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験動物モデル / ウイルス感染症 / サル骨髄造血幹細胞移植 / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
エイズ等のウイルス感染症研究では、個体レベルの病態解析や抗ウイルス薬の前臨床試験に医学実験用マカク属サル(サル)を用いた動物モデル実験系が必要不可欠である。しかし、サルは中型動物であることや多様な遺伝的背景による個体差が大きく実験結果にばらつきがでるなど、実験には困難を伴う。 本研究では、遺伝的背景が均一で小型実験動物として汎用されるマウスにサル骨髄造血幹細胞(サルCD34+造血幹細胞:rHSCs)を移植し、サル免疫系細胞を体内に有するマウス(サル化マウス)の作製を行い、この作製したサル化マウスにサル免疫不全ウイルス(SIV)を接種し感染機序及びその病態を明らかにすることで、ウイルス感染症研究に寄与する新たな小動物モデル実験系の構築を目指す。 本年度はまずサル化マウス作製法の確立を試みた。具体的には、サル骨髄からのrHSCs純化方法の確立、NOGマウスへのrHSCs移植法及び移植に最適なrHSCs細胞分画及び細胞数の検討を行った。その結果、サル骨髄中のrHSCsのみでなく全骨髄細胞を移植用細胞とし、脛骨骨髄内移植法での移植を行うことで、より効果的かつ簡便にサル化マウスを作製できることがわかった。この方法で作製されたマウスは、移植後8週目には末梢血中にサルCD45+細胞群が33.3~86.3%と高度に生着し、骨髄、胸腺、脾臓、腸間膜リンパ節、肺などのリンパ組織においてもサルCD4+T細胞が観察された。 次に、作製したサル化マウスにSIVmac239株を腹腔内より接種した。そうしたところ、ウイルス接種1週目より血漿中でSIVRNAが検出され、末梢血においても接種後3週目よりSIVDNAが検出され、感染が成立していることが明らかとなった。以上から、全骨髄細胞移植によりサル細胞を体内に高頻度に持つマウスの作製に成功し、さらにSIV感染モデルとして利用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画としては、サル免疫系細胞を体内に有するマウス(サル化マウス)の作製を行うことがまず第一の目標となっており、サル全骨髄細胞をNOGマウスに脛骨骨髄内移植することで、より効果的かつ簡便にサル免疫細胞を体内に持つマウス(サル化マウス)が作製できることを明らかにしたことは、この目標をクリア出来たと考えられる。 また、これらのサル化マウスにサル免疫不全ウイルス(SIV)を腹腔内接種することによりウイルス感染病態を観察することができたことは、研究実施計画通りに進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、本年度の成果を基盤とし、以下の研究を遂行したい。 1)細胞指向性あるいは病原性の異なるSIVのサル化マウスへの感染実験 SIVには本年度サル化マウスへの感染実験に用いたT細胞指向性分子クローンのSIVmac239株以外に、急性腸管症状を示す病原性クローンのSIVpbj株や脳症を引き起こすSIVB670などが存在し、それぞれアカゲザル個体にエイズを発症させることがわかっている。これらのウイルスをサル化マウスに感染させ、その感染病態を比較検討し、サル化マウスのエイズ病態解明研究への利用について検討する。 2)異なるサル個体の全骨髄細胞移植により作製されたサル化マウス間でのウイルス感受性及び病態の差異についての検討 サルはマウスと異なり遺伝学的コントロールがなされていない。したがって、多様な遺伝的背景による個体差が大きく実験結果にばらつきがでるなど、実験には困難を伴う。そこで、異なるサル個体から得た全骨髄細胞の移植により作製されたサル化マウス間においてSIV感染による病態進行に差異があるかどうか検討する。また、骨髄提供サル個体についてウイルス感染抵抗性宿主因子の発現について検討し、ウイルス感受性や病態の差異との関連について明らかにしていきたい。
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Research Products
(2 results)