2017 Fiscal Year Research-status Report
癌と間質線維芽細胞との相互作用による浸潤能獲得の分子機構の解析
Project/Area Number |
16K14616
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
堺 隆一 北里大学, 医学部, 教授 (40215603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 英樹 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 部長(移行) (10345035)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌間質相互作用 / スキルス胃がん / 癌微小環境 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
スキルス胃がん細胞と間質線維芽細胞の直接的な相互作用を評価するハイスループットスクリーニング系を確立する目的で、まずスキルス胃癌細胞株44As3と高分化型胃癌細胞株MKN74にレンチウィルスベクターによりGFP遺伝子を導入し、安定形質発現株を樹立した(44As3-GFP、MKN74-GFP)。同様に、スキルス胃癌由来間質線維芽細胞CaF37にTomato遺伝子を導入した(CaF37-Tomato)。CaF37-Tomatoを96ウェルプレートに播種し、コンフルエントになるよう培養した。そのCaF37-Tomato上に44As3-GFP及びMKN74-GFPを播種し、一定時間培養した後に洗浄し、CaF37-Tomatoに接着して残った44As3-GFP及びMKN74-GFPの蛍光強度をマイクロプレートリーダーにて測定した。このアッセイ系を用いて実験の条件検討を行い、最適な細胞数、培養時間、洗浄の条件を決定した結果、44As3-GFPの蛍光強度がMKN74-GFPの10倍程度高くなった。また他のスキルス胃癌細胞を用いた場合にも同様の結果が得られた。従ってこのアッセイ系により、スキルス胃癌細胞に特有な線維芽細胞との接着能を検出することが可能となった。 そこで藤田保健衛生大学の黒澤博士らが作成した、スキルス胃癌を含む胃癌細胞株の細胞表面に結合する数百種類のファージ抗体クローンを用いて阻害抗体の探索を試みた。各ファージを感染させた大腸菌培養上清を用いて、上記接着アッセイを行ったが、大腸菌培養液が非特異的に両細胞間の接着を阻害したため、このアプローチではスクリーニングが困難であることが分かった。そこで、先ず両細胞間の接着部位を認識するファージ抗体クローンを細胞染色により選択した後、ヒトIgG化を行い、精製したIgG抗体を用いて機能評価を進めていく予定で、まず抗体の選抜を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で得られたスキルス胃癌に特有の間質線維芽細胞との強い相互作用を、蛍光ラベルを用いて可視化し定量するシステムを最適化できたのは次のスクリーニングに向けて極めて大きな成果である。ただ一本鎖のファージ抗体クローンを含む未精製の大腸菌培養上清を用いた最初のスクリーニングでは、バックグラウンドが高くて特異的に阻害する抗体クローンを見出すことができなかった。抗体の精製のステップを入れるか、Fc部分を加えて完全IgG化することで結合能を増すなどのステップが今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
両細胞間の接着部位を認識するファージ抗体クローンを細胞染色により選択した後、ヒトIgG化を行い、精製したIgG抗体を用いて機能評価を行っていく。またスキルス胃癌細胞表面タンパク質に対するモノクローナル抗体をマウスやラットにて作製し、接着アッセイによるハイブリドーマ上清のスクリーニングを行い、阻害抗体を得るというアプローチも行って行く計画で準備を進めている。
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Causes of Carryover |
2017年12月24日に起きた医学部M1棟5階における火災の影響で、生化学実験室が使用不可能になり、2018年4月まで、この実験室で行っているタンパク質の調整・解析など、基本的な実験のほとんどに大きな支障をきたした。これを主たる理由として延長を申請する次第である。
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