2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of reverse-phase protein array platform for analyzing tissue samples and identification of biomarkers to guide the use of a TNIK inhibitor
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16K14627
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
増田 万里 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (70435717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子標的治療薬 / Wntシグナル / トランスレーショナルリサーチ / 大腸がん / 細胞・組織 / RPPA / シグナルプロファイル / 高精度医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究計画では、1)初年度に実施した組織検体を用いたRPPA法の最適化と、2)RPPA法で得られたTNIK阻害剤NCB-0846の培養細胞におけるシグナルプロファイルの変化を検証し、更にその結果を用いてバイオマーカーの探索を行うことを目標としていた。組織検体を用いたRPPA法の最適化については、培養細胞からタンパクを抽出する際用いたRIPAバッファーが凍結組織検体からのタンパクの抽出にも適応可能であることを確認した。更に、作製したRPPAを用いてtotal 抗体とリン酸化抗体によるシグナル検出を行い、得られた結果をウエスタン法で検証した。その結果、両結果には高い相関が得られた。一方、RPPAを用いたTNIK阻害剤バイオマーカーの探索については、大腸がん細胞HCT-116及びDLD-1細胞株を我々が開発した新規TNIK阻害剤NCB-0846、及びTNIK阻害活性を持たないNCB-0846の構造異性体であるNCB-0970で処理し、様々なシグナル伝達経路のキーとなる伝達分子のリン化プロファイリングをRPPAにより行った。NCB-0846は、TNIKキナーゼ活性を阻害することによりWntシグナル経路を遮断する薬剤であるが、NCB-0846処理細胞とNCB-0970処理細胞より得られたリン酸化プロファイルの比較解析により、NCB-0846のみで、特徴的にリン酸化が増加あるいは減少するタンパクを見出し、ウエスタン法及び共焦点顕微鏡にて確認を行った。これらのタンパクの中にはWntシグナルへの関与がこれまで報告のないタンパクも見つかっている。TNIKは多機能なタンパク質であることがこれまで報告されており、本解析で検出されたWntシグナル以外のシグナル経路がNCB-0846により作用を受けていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には、組織検体を用いたRPPAの最適化を行うため、マウスのxenograftの腫瘍組織を用いて行う予定であったが、すい臓がんの肝転移の腫瘍の生検組織検体でRPPAの作製を行うことができた。これらは凍結組織でありRPPA法が可能であることを示すことができた。加えて、平成29年度は、RPPA法を高精度医療の技術基盤として臨床試験に既に組み込んでいる米George Mason 大学に技術研修の機会を持つことができた。凍結検体以外にも、ホルマリン固定後パラフィン包埋ブロックを用いた解析についても細胞RPPAとほぼ同じ条件でシグナル検出が可能であることが明らかになった。一方、TNIK阻害剤の治療効果モニタリングマーカーの探索については、28年度に実施したRPPA法によるNCB-0846及びその構造異性体でありTNIK阻害活性の無いNCB-0970の大腸がん細胞株におけるリン酸化プロファイルについて、本年度は,そのデータ解析を行い、その結果NCB-0846で有意に変動するリン酸化タンパクについてウエスタン法や共焦点顕微鏡によって検証を行った。なかでも、Histone H2Aの139番目のセリン残基のリン酸化(γH2AX)はNCB-0846処理により強く誘導されることが、ウエスタン法でも確認された。更に,NCB-0846は大腸細胞株において処理後約6-8時間でγH2AX fociの形成を誘導することが共焦点顕微鏡解析によって明らかになった。また、その下流及び上流のタンパクのリン酸化も誘導されていることが確認されたため、DNA損傷・修復シグナルが活性化していると考察された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本研究の最終年度であるため、まずは本研究成果をまとめ論文投稿することが第一目標となる。 (1)NCB-0846により惹起或は抑制されるシグナル伝達経路の解明と治療効果モニタリングマーカー候補分子の同定 NCB-0846には強いアポトーシス誘導効果があるが、本研究によりその誘導効果の作用機序の主たる原因として、NCB-0846によりγH2AX fociが形成され、更にはDNA損傷・修復シグナルが活性化しアポトーシスを引き起こしていることが明らかになった。よってγH2AX fociの形成が大腸がんにおいて本薬剤の治療効果モニタリングマーカーとなる可能性が示唆された。本研究の今後の課題として、1)NCB-0846及びTNIK阻害によるDNA損傷・修復シグナル活性化の機序の詳細を解明し、2)本薬剤の治療効果モニタリングマーカーとしての可能性をマウスXenograftモデルで検証することを目標としていきたい。 (2)組織検体RPPA法を高精度医療に応用しうる基盤確立へ 実験条件を均一にすることが比較的容易である培養細胞実験とは異なり、臨床検体についてRPPAにより得られるデータの質を左右するのは、その取り扱いであることが明らかになった。平成29年度は、RPPA法を高精度医療の技術基盤として臨床試験に既に組み込んでいる米George Mason 大学に技術研修の機会を持つことができた。今後は国際レベルでデータ共有が可能となるように、臨床検体の取扱い法、保存法についてのStandard Operating ProcedureをRPPA Global Committee のメンバーと共に作成とすることを目標としている。更には、適切な患者の選択や、薬剤奏効性などを投与前に検査できる高精度医療の技術基盤に磨き上げることが現時点におけるゴールと考えている。
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