2016 Fiscal Year Research-status Report
Notch活性化型悪性腫瘍を標的とした新規分子標的薬の開発
Project/Area Number |
16K14635
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 准教授 (10398753)
穂積 勝人 東海大学, 医学部, 准教授 (30246079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Notch / T-ALL / Lmo2 / 抗腫瘍薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
Notch1遺伝子変異によるNotchシグナルの過剰発生は、ヒトT細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)の50%に認められる等、ヒト腫瘍発生との関連が指摘されている。しかし、Notchシグナル阻害剤は腸管上皮細胞の分化異常を誘導する等、重篤な副作用を有し、抗腫瘍薬としての効果は限定的である。我々は、NotchシグナルによるT細胞分化誘導の詳細を調べる過程で、造血未分化細胞に発現するLmo2がNotchシグナル応答性に重要であり、その発現低下は、Notchシグナルによって速やかに細胞死が誘導されることを見出した。そこで、Lmo2を標的として新たな抗腫瘍薬の開発につながる基礎的知見の集積を試みている。 本年度は、我々が独自に樹立したLmo2の発現が低下した造血未分化細胞株、そこにLmo2を過剰発現させた細胞株および正常分化能を有する細胞株を用い、Lmo2発現低下によるNotch応答性の変化について、その分子機構を調べた。その結果、造血未分化細胞にて、Lmo2は、(1)未分化造血細胞の生存維持に寄与するBcl11aの発現を誘導すること、(2)T細胞分化誘導に必須でかつNotchシグナル下流分子として機能するTcf-7遺伝子のエピジェネティック制御に寄与し、Notchシグナル応答性に発現誘導される状態に維持すること、を明らかにした。 一方で、すでにLmo2のアダプター機能を抑制することが示されたLIMドメイン結合ペプチドの過剰発現では、造血未分化細胞の分化能を抑制することができないことを見出した。この結果は、Lmo2機能抑制戦略を根本的に改める必要性を示唆している。我々はすでに、Lmo2発現を効果的に抑制できるshRNAを同定し、その機能抑制による造血・リンパ系分化抑制を観察しており、今後、まずshRNAによるLmo2機能抑制と、造血・リンパ系腫瘍の発生との関連を追及する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Lmo2によるNotchシグナル受容性維持の分子機構については、順調に解析が進んでいる。その分子機構の詳細を理解するため、継続して実験を行う。 Lmo2阻害剤の開発については、LIMドメイン結合ペプチドに既報のような強い抑制活性を見出せなかったことから、戦略の練り直しを迫られており、小分子化合物のスクリーニングまで至っていない。立体構造情報からの結合シミュレーションから、新たなLmo2阻害機構を推察し、研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
Lmo2によるNotchシグナル受容性維持の分子機構については、アダプター分子としての機能的パートナーを免疫沈降実験により特定する。現在、E2Aファミリー分子(Tcf3、Tcf12)を想定している。また、Lmo2複合体による直接的な標的遺伝子の同定を目指し、Bcl11やTcf7遺伝子への結合をChipアッセイにより解析する。 Lmo2の腫瘍化との関連については、shRNAを発現させた造血未分化細胞を用い、その分化への影響を検討する。さらに、Notch1活性化体(ICN1)、BCR-ABL、c-MYCなどの強制発現によるT、骨髄、B細胞系の腫瘍発生への影響を観察することにより、腫瘍の発生とLmo2による未分化性維持との関連について追求する。
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Causes of Carryover |
Lmo2機能抑制作用が報告されたLIMドメイン結合ペプチドをモデルとして、Lmo2抑制効果を示す小分子化合物をスクリーニングする予定であったが、同ペプチドの過剰発現が、我々が見出したLmo2の造血未分化細胞における未分化性維持作用については、これを抑制しなかったことから、スクリーニング法の再構築が必要となった。現在、Lmo2分子構造を元に、シミュレーション作業中であり、新たな戦略を構築する。以上の不測の事態により、一部研究費が次年度繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Lmo2阻害剤の新たな開発戦略を策定し、スクリーニング法を確立する。E2Aを発現するマウスpre-B細胞株にLmo2、Ldb1-VP16分子を過剰発現する細胞を新たに樹立する。そこに、mb-1プロモーター(E2A結合配列)を持つLuciferaseレポーターを遺伝子導入し、人為的にE2A/Lmo2/Ldb1複合体を形成させ、VP16によるLucの発現系を構築する。本アッセイ系に、Lmo2 LIMドメインに結合する可能性をシミュレーションレベルで推測される小分子化合物を添加し、複合体形成阻害作用をLuc発現抑制活性にてスクリーニングする。
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