2016 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質に着目したサンゴ産卵誘発メカニズムの解明と応用研究
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16K14661
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Research Institution | Okinawa National College of Technology |
Principal Investigator |
平良 淳誠 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 教授 (20462153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 亮 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 助教 (50547502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経伝達物質 / コユビミドリイシサンゴ / アドレナリン / ドーパミン / ノルアドレナリン / ノルアドレナリントランスポーター / サンゴの産卵 / LC/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県瀬底島周辺から採取したコユビミドリイシは、液体窒素で急速冷凍または屋外水槽に静置し後に実験に用いた。採取サンプルは、分析までは-80℃で保存した。保存サンプルを用いて、カテコールアミン類の分析法の検討を行った。サンゴ片サンプル(数十mg)を、予め液体窒素で冷却したクールミルを用いて粉砕し、リン酸緩衝液(10 mM,pH 8.5)で10倍に希釈、懸濁させて遠心(5000 r.p.m)を行った。上清の一部(50μl)を使いタンパク量を測定し、残りはカテコールアミン化合物に対応の固相カラムに充填し、アセトニトリル/TCFの溶離液で固相抽出した。 抽出したサンプルは、LC/MSを用いてSIM法で分析して、アドレナリン(AD)、ノルアドレナリン(NA)、ドーパミン(DA)の神経伝達物質を検出した。物質の同定は各々の標準物質を用いて行い、また定量下限値(DA < 2.54 nM、AD < 1.42 nM、 NA < 32.17 nM)を求めた。確立した本方法で測定したコユビミドリイシの神経伝達物質含有量(mg/g-protein)は、AD,0.062-0.16; NA,0.52-1.39; DA,0.15-0.34であった。 一方で、NAトランスポーター(NAT)遺伝子について、サンゴゲノムデータベース(http://marinegenomics.oist.jp/- coral/viewer/info?project_id=3)により、コユビミドリイシの全ゲノム情報からNAT遺伝子のイントロン情報遺伝子配列のアノテーションを行い、候補遺伝子について約200 bpのプライマーを作成した。サンゴ片サンプルからTrizolを用いてRNA抽出を行い、DNaseによって処理後にcDNAを作成してリアルタイムPCRを行い、ターゲット遺伝子を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究期間において、コユビミドリイシ群体から採取したサンゴ片サンプルでの神経伝達物質のLC/MSによる微量定量法を確立できた。また、同サンプルについてNATのターゲット遺伝子を特定できた。確立した手法を用いて、サンゴの産卵誘発剤にもなる過酸化水素処理ストレスによるサンゴの同物質の定量とNAT遺伝子発現実験についても終了した。 今年度は沖縄近海におけるサンゴの白化による被害が大きかったため、サンプルの確保に支障をきたした。
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Strategy for Future Research Activity |
神経伝達物質及びその一つのNAT遺伝子の検出法を用いて、同物質とNAT遺伝子の産卵前後における変動を測定する。測定試料は、前年度において産卵直前の群体での定量に加えて、同群体の産卵後のサンプルについて測定する。また、過酸化水素処理ストレスによるサンゴの神経伝達物質の動態と、NTの発現を検討する。その結果に基づいて、サンゴの産卵と神経伝達物質との関連を明確にしていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、沖縄近海におけるサンゴの白化によるサンプルの採取が予定日数よりも少なく、そのためサンプリング旅費、サンゴ飼育費用、分析費用等が予定使用額よりも減額となった。また、学会(日本サンゴ礁学会)が県内で実施されたため、旅費経費が削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、採取サンプルの増量とそれに伴う飼育、並びに分析試料の増加を予定している。また、研究成果の発表及び情報交換(海外も含む)を積極的に実施する予定である。
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