2016 Fiscal Year Research-status Report
狭間条件を好む難培養微生物を網羅的に分離する3D勾配培養法の開発
Project/Area Number |
16K14663
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 真悟 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム, 特任研究員 (40554548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 難培養性微生物 / 単離培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
新奇の微生物を単一種として分離して、室内で培養できるようにすることは、まだ見ぬ新・高機能をもつ微生物の発見と保全に直結し、有用な微生物資源を次世代社会に残すための重要課題である。本研究では、自然環境中では一般的にみられる物理化学的に「狭間の」条件下を好んで生育する新奇微生物を分離培養するための、ひとつの培養容器内に3つの物理化学成分の勾配を同時に形成する「3D勾配培養法」を開発することを目的とした。 研究初年度である平成28年度は、3D勾配培養法の基盤となる1Dおよび2D勾配培養法の開発に着手した。1D勾配培養法では、二価鉄と酸素の濃度勾配を、ひとつの培養容器内につくることに成功した。同培養法を用いて、汽水域の環境試料から、難培養性微生物の代表格として有名な微好気性鉄酸化バクテリア2株の分離培養に成功した。本分離株は両方とも、数百nMの酸素濃度でも生育できる超微好気性であることがわかり、本研究における1D勾配培養法の有用性が確かめられた。この成果については、現在国際雑誌に投稿中である。温度勾配については、培養容器の両端に小型ヒーターもしくは小型冷却器を密着させることで、4℃から50℃までの温度勾配をひとつの培養容器内で作ることに成功した。続いて、平板培養容器において、ある1軸上に温度、それと直交する1軸上に酸素濃度の勾配をつくることを試みたところ、予想通り2Dでの温度・酸素濃度勾配を作り出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要に記した通り、当初の計画通り、1D、2D勾配培養法の確立と実用化にむけて着実に成果が上がっているため、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに成功した温度、二価鉄、酸素の勾配だけでなく、塩分やpH、硫化水素や硝酸等の代謝基質においても、ひとつの培養容器内に1D勾配がつくれるかどうかを実験的に検証する。さらには、各組み合わせで2D、3D勾配がきちんと作れるのかを検証する。3D勾配培養法(場合によっては1D、2D)で勾配がうまく作れた場合は、当初の計画通り、多種の新奇微生物の存在が期待できる数地点の陸上湧水域から試料を採取し、その試料から「狭間の」条件下に生息している新奇の微生物の分離培養を試みる。
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Causes of Carryover |
培養容器については特注品を購入することを予定していたが、2D勾配培養までは安価な市販品に改良を加えることで代替可能であった。本予算で購入を予定してしていた微小酸素メーターについては、別予算で確保したもので代替可能であった。以上が、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、3D勾配培養に用いる容器は特注品でなければ目的達成が困難であるため、これの設計・購入費に計上する。その他、酸素以外の化学分析に必要不可欠な微小電極の購入を予定している。
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