2016 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的な表在性蛋白質の単離精製技術の開発と実証
Project/Area Number |
16K14680
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 豪 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20263204)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロテオミクス解析 / 質量分析 / 表在性蛋白質 / 抗原探索 / 非天然ビオチン化ラベル / 改変型ストレプトアビジン / CTC / 血管内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
体内を循環する癌細胞(CTC)は転移癌の原因であり、これを検出する抗体を取得できれば、革命的な診断薬や抗癌剤を 開発することができる。一般に、抗体は分子量が約 15万と大きく、細胞膜を通過でき ない。従って、癌細胞の表面に特異的に発現している蛋白質を単離精製する技術を開発すれば、CTCを 認識する抗体を取得し、革新的な医薬品の創出が可能となる。本研究課題では、非天然のビオチン化試薬を合成し、癌細胞の表在性の蛋白質のみを ラベル化し、非天然のビオチンのみを認識する改変型ストレプトアビジンを担持したビーズで単離精製する技術を開発するとともに、質量分析法を 駆使して、癌細胞の表面に極微少量であっても有意に発現している新規な標的分子を探索する技術の開発に取り組んだ。
ラベル化試薬については、非 天然ビオチンの末端にスクシンイミド基(NHS基)とスルホン酸基を付加した誘導体を 合成することに成功した。
細胞表面へのラベル化実験を 試みたところ、天然のビオチン化試薬を用いた従来法と同様に表面蛋白質を修飾できることが判明した。次に、マウスを用いた血管内皮のラベル化 実験およびプロテオミクス解析を行ったところ、従来法では内在性ビオチン化蛋白質であるカルボキシラーゼがTop3にリストされたが、新規法ではこれらを排除でき、Topにフィブロネクチンがリストされるなど、狙い通りにデザインされていた。さらに、A20リンパ腫を播種した疾患マウスについても同様にプロテオミクス解析を行った。担癌マウス で1.5倍以上亢進する血管内皮蛋白質の種類について解析したところ、従来法でのみリ ストされる蛋白質が147種、従来法と新規法で共通にリストされる蛋白質が28種あったが、新規法でのみ亢進が認められた蛋白質が53種 あることが判明し、Validationを行っている。 今後、更なる解析を進め、より優位な抗原タンパク質の同定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ラベル化試薬については、非天然ビオチンの末端にスクシンイミド基(NHS基)とスルホン酸基を付加した誘導体を合成することに成功した。 細胞表面へのラベル化実験を試みたところ、天然のビオチン化試薬を用いた従来法と同様に表面蛋白質を修飾できることが判明した。次に、マウスを用いた血管内皮のラベル化実験およびプロテオミクス解析を行ったところ、従来法では内在性ビオチン化蛋白質であるカルボキシラーゼがTop3にリストされたが、新規法ではこれらを排除でき、Topにフィブロネクチンがリストされるなど、狙い通りにデザインされていた。さらに、A20リンパ腫を播種した疾患マウスについても同様にプロテオミクス解析を行った。担癌マウスで1.5倍以上亢進する血管内皮蛋白質の種類について解析したところ、従来法でのみリストされる蛋白質が147種、従来法と新規法で共通にリストされる蛋白質が28種あったが、新規法でのみ亢進が認められた蛋白質が53種あることが判明し、Validationを引き続き行っている。 なお、構築された技術の優位性が確認されたため、特許申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
A20リンパ腫を播種した担癌マウスについて、更に詳細なプロテオミクス解析を進め、少しでも可能性のある有意な抗原タンパク質の同定を進め、その蛋白質を認識する抗体を取得する予定である。 一方、CTCについても本技術の有用性が認められたことを受け、臨床医との調整を行い、CTC細胞を用いたプロテオミクス研究について具体的な検討を進める予定である。
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