2017 Fiscal Year Research-status Report
炭素核の直接測定によるより高分子量の蛋白質のNMR構造解析への挑戦
Project/Area Number |
16K14683
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
池上 貴久 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20283939)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | NMR / 帰属 / 核磁気共鳴 / TROSY |
Outline of Annual Research Achievements |
核磁気共鳴 NMR を用いて蛋白質の立体構造やダイナミクスを解析する場合、各ピークがどの原子核のスピンに対応するのかを決める必要があり、これを帰属と呼ぶ。帰属は分子量が 30 kDa 以下の場合には比較的プロトコール通りに順調に進行するが、50 ~ 200 kDa のレベルになると非常に難しくなる。それは、磁気の緩和が高分子量になるほど速くなるためである。これを克服する方法として、蛋白質を重水素化したり、測定の温度を上げたりする方法が採られている。超好熱菌由来の蛋白質では高温でも安定な場合があり、40~50℃ での測定が可能である。ところが、温度を 50℃ などに上げると、今度はアミド水素の水との交換が速くなり、1HN を基軸とした測定では、この交換による信号強度のロスが無視できなくなる。そこで、筆者は 13Ca などを基軸とした測定法を提案した。
この実験では4量体で 150 kDa となる蛋白質を調製した。好熱性バチルス由来であるため、40℃ でも安定であることを確認した。2H, 15N, 13C 安定同位体を入れた最少培地で大腸菌を培養し、この蛋白質を発現させた。また、[2H, 15N]-glucose を入れた培地に Ile, Leu, Val の前駆体となる [13C, 1H]-methyl [2H, 12C]-2-ケト酸を入れた培地でも大腸菌を培養した。これからは Ile, Leu, Val のメチル基だけが孤立して 13C, 1H で標識されており、その他は 12C, 2H で標識された蛋白質を調製することができた。
後者の蛋白質からは、メチル基の信号が期待される個数だけ観測された。前者の試料についても、1H-15N TROSY スペクトルを観測することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
15N で標識された 150 kDa の蛋白質については非常に順調に発現、精製が進んだ。ところが、2H, 13C, 15N 標識蛋白質の場合は、精製まではあまり問題なく進んだが、NMR の測定の最中に impurity による分解が起こっていることが分かった。これは、重水培地では目的蛋白質の発現量が少なくなるため、相対的に impurity-protease の量が多くなることによるものと考えている。この分解のため、測定は2日以内に限定されてしまい、各種パラメータを試すことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは impurity protease による分解を無くすため、inhibitor cocktail などを試した。しかし、効果は見られたものの決定的とまではいかなかった。この蛋白質は当初は His-tag 付きで発現させていたが、その場合、翻訳時の folding がうまく行かないことが判明し、His-tag などの affinity を利用した設計を全てやめた。そのため、精製が不十分なのではないかと考えている。
今後、別の affinity-tag を検討する。また、同じ His-tag でも N-末端側か C-末端側に付けるか、あるいはリンカー部分の長さを変えることによって、翻訳時の folding がうまく行く系を確立させようと計画している。
|
Causes of Carryover |
調製した蛋白質が不純物のプロテアーゼによって分解されるという予想外のことが起こったため、当該年度の試薬の購入量が少し減った。これを早く解決して次年度での購入に充てることとした。
|
-
[Journal Article] Association of ferredoxin:NADP+ oxidoreductase with the photosynthetic apparatus modulates electron transfer in Chlamydomonas reinhardtii.2017
Author(s)
Mosebach, L., Heilmann, C., Mutoh, R., Gaebelein, P., Steinbeck, J., Happe, T., Ikegami, T., Hanke, G., Kurisu, G., Hippler, M.
-
Journal Title
Photosynth. Res.
Volume: 134
Pages: 291-306
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research