2018 Fiscal Year Research-status Report
新規脳内糖化ステロール群の発見に基づくステロール代謝経路の再構築
Project/Area Number |
16K14687
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平林 義雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 客員主管研究員 (90106435)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ステロール / 糖化ステロール / 糖脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者が発見した脳内新規糖化ステロール群に着目し、それらの構造、代謝経路、局在、生理機能を明らかにすることである。申請者は、動物では1種類しか存在しないと考えられてきた糖化ステロールが、脳においては一群を成して存在することを発見した。驚いたことに、一群の中にはこれまで未報告の新たなステロール骨格を有するものが存在し、パーキンソン病モデル動物で発現量が変動している新奇物質も見つかった。新規糖化ステロール群の存在は、脳において未知のステロール代謝経路が存在する可能性を示唆しており、本研究では、完成されたと考えられているステロール代謝経路を再構築することを目指す。具体的には、新規糖化ステロール群(CG群)の生理的意義を解明するため、1.CG群の構成分子の構造決定、2.CG群の代謝酵素の同定、3.CG群の局在解析、4.CG群の生理機能解析という4つのステップで研究を進める。 2018年度は、ステップ4に取り組むため、2017年度にステップ2で同定したCG群代謝酵素の1つであるグルコシルセラミド分解酵素GBA2をノックアウト(KO)した細胞を作製した。GBA2はCG群の一種であるグルコース化コレステロールの合成活性をもつことから、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法でグルコース化コレステロール量を測定した結果、GBA2-KO細胞ではグルコース化コレステロール量がWT細胞に比べて有意に低下していた。また、GBA2-KO細胞はWT細胞と比較して、後期エンドソーム、ゴルジ体の分布様式が顕著に変化していた。GBA2-KO細胞では、グルコシルセラミドやセラミドなどの脂質量もWT細胞と比べて変動していたことから、GBA2-KO細胞で見られた細胞内小器官の分布様式の変化がグルコース化コレステロールによって引き起こされたか否かについては今後検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度終了時点で、ステップ4(CG群の生理機能解析)に着手しており、2019年度はステップ4を引き続き実施する予定であることから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、交付申請書に記載した研究実施計画に従って、ステップ4(CG群の生理機能解析)を進めていく。
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Causes of Carryover |
同じ理化学研究所内ではあるが、2018年4月1日から所属が脳科学総合研究センターから開拓研究本部に変更になったため、実験が本来の軌道に乗るまでに時間を要した。そのため当初計画より実験の進展に遅れが生じ、交付申請時に計上した予算を全て使用しなかったため、未使用分を次年度に使用することにした。 2019年度は、交付申請書に記載した研究実施計画に従い、2018年度未使用分および2019年度請求の研究費を用いてステップ4(CG群の生理機能解析)を進めていく。
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