2018 Fiscal Year Research-status Report
光操作による膜形状変化と膜上シグナリング誘導の解析
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16K14692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 奈央 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90596850)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞情報伝達機構 / BARドメインタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は細胞性粘菌のBARドメインタンパク質であるslp, nlpのそれぞれBARドメインについて精製しin vitroにおける機能解析を行った。また、細胞内での機能を同定するため、蛍光タグを用いて細胞内局在を同定した。本年度はslpの局在に必要なドメインの同定を行うため、BARドメインのみをもつ蛍光タグ(slp-BAR)を作製し全長ものと比較した。全長slp は、多細胞移行期に連なって運動する後ろ側の細胞の細胞内前端に線状に局在するのに対し、slp-BARはその局在は観察されなかった。このことからこの局在はBARドメイン依存ではないことが示された。一方で、栄養成長期の細胞の基質接着面にみられるアクチン波とよばれるF-アクチンに富んだ領域には全長slpの局在は観察されないが、slp-BARはその前端に線状に局在した。またslp-BARを発現させた細胞は増殖が遅くしばしば多核の細胞となることからもBARドメインだけで機能をもちうることが示唆された。また、slp, nlp遺伝子破壊株の作製を行い表現型の同定を行った。上述の細胞内局在から走化性に表現型が得られることが期待されたが、nlp, slp遺伝子破壊株はそれぞれ野生株と比較し明確な違いは観察されなかった。先行研究ではslp, nlpタンパク質はともにWASPと相互作用するという報告があり、その機能が重複していることが示唆されている。そこで多重遺伝子破壊が容易に行えるCre/LoxP システムを用いて、slp/ nlp遺伝子破壊株の作製を試みた結果、遺伝子破壊株を得ることができた。次年度はこの細胞の表現型の解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
slp遺伝子破壊株では明確な差が観察される表現型の結論づけに時間がかかったこと、slp/ nlp遺伝子破壊株がなかなか得られず、nlp遺伝子破壊のためのコンストラクトを複数作製し試みる必要が生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたslp/ nlp遺伝子破壊株の表現型の同定を行う。slp/ nlpはWASPと相互作用することから、アクチン骨格、クラスリンなどエンドサイトーシスに影響があるかこれらのマーカーについて可視化を行う。slp/ nlpの蛍光タグを発現させ表現型の復帰を観察し、細胞に細胞にニードルをあてて膜変形を誘導した場 合や、浸透圧変化やアクチン骨格阻害剤を加えることで細胞形状を変化させた場合の局在変化を観察し、これまでin vitroで観察された機能と比較し考察する。 今年度着手できなかったRasやGEF、PI3Kの精製タグの検討と精製を行う。油相中の水滴における精製slpおよびnlpの濃度と膜の変形度について定量的な解析を行う。in vitro と in vivoの結果を合わせて論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
今年度は遺伝子破壊株の作製に時間をとられ、タンパク質を精製が必要なin vitro の実験に十分時間がとれなかった。そのためその実験に必要な精製用の担体や脂質など試薬購入にあてる物品費が少額になったためである。
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