2016 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ装置から細胞膜へのGPIアンカー型タンパク質の輸送に働く因子の網羅的解析
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16K14696
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田嶌 優子 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10423104)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GPIアンカー型タンパク質 / 細胞内輸送 / ゴルジ装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
GPI (Glycosylphosphatidylinositol)は糖脂質であり、翻訳後修飾として150種ほどのタンパク質を細胞膜につなぎ止め、その輸送や機能に深く関与する。これまでに、GPIアンカー型タンパク質(GPI-Anchored Proteins; GPI-APs)が小胞体で合成され、ゴルジ装置でGPI脂質の構造変化を受ける一連の生合成反応経路は、比較的詳しく研究されてきた。一方、GPI-APsの輸送経路は、生細胞内でGPI-APsの動態を経時的に定量化する方法が限られていたため、その分子機構について不明な点が多い。 本研究では、GPI-APsの動態を生細胞で空間的・経時的・定量的にモニターする方法を、以前に開発された温度感受性GPI-APsの輸送検出システムにRUSH(Retention using selective hooks)法を応用して新たに確立し、CRISPR/Cas9 システムを用いたsingle guide RNA(sgRNA)ライブラリーと次世代シークエンサー解析を組み合わせて、ゴルジ装置から細胞膜へのGPI-APsの輸送に働く遺伝子を一度に網羅的に同定することを目指す。 申請者は、RUSH法を応用して改変した温度感受性レポーターGPI-APsを作成し、続いてTet-onシステムで発現を誘導できるようにした。また、ゴルジ装置局在フックタンパク質MannosidaseIIを作成して、HEK293細胞又はHeLa細胞に、ゴルジ装置局在フックタンパク質MannosidaseIIを安定に発現する細胞株を新たに樹立した。さらに、Tet-onシステム温度感受性レポーターGPI-APsを発現する細胞株を樹立して、ゴルジ装置での繋留と輸送開始を制御する系を構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に基づき、温度感受性レポーターVFE-GPI (温度感受性VSVG、Flagタグ、EGFPとGPI付加シグナルの融合タンパク質)にストレプトアビジン結合部位(Sb)を導入して、新たなレポーターVFSbE-GPIを作製した。フックタンパク質は、ゴルジ装置の内腔側に発現するMannosidase IIにストレプトアビジン(Str)とHAタグを融合して作製した。HeLa又はHEK293細胞にフックタンパク質Mannosidase II-Str-HAを安定に発現する細胞株を新たに樹立し、さらに、Tet-onシステム誘導性のレポーターVFSbE-GPIを発現する細胞株を樹立した。 HEK293細胞では、ドキシサイクリンで20時間ほど発現誘導した後、VFSbE-GPIはビオチン添加後20分ほどで細胞表面に到達することを確認した。HeLa細胞では、細胞表面に到達するのに30分ほどかかりHEK293細胞より少し長かった。当初の計画では、40℃で1日培養することでレポーターVFSbE-GPIを小胞体に蓄積させた後、32℃培養にシフトして、ゴルジ装置でフックタンパク質によってレポーターVFSbE-GPIを係留する二段階で蓄積させる計画であった。しかし、ゴルジ装置での一度の係留で、細胞表面に到達したVFE-GPIをFACS解析するのに十分量検出できることがわかった。平成28年度の研究計画の最後にある、ゴルジ装置から細胞膜へのVFSbE-GPI輸送に遅延を起こす遺伝子の網羅的な同定は、本細胞を用いて行う。 以上のように、当初の計画に沿ってほぼ順調には進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞表面へのVFSbE-GPIの漏れ出しを最小にするために、ゴルジ装置での係留時間が短くなるように、ドキシサイクリン処理時間を再検討する。その後、計画に沿って、ゴルジ装置から細胞膜へのVFSbE-GPI輸送に遅延を起こす遺伝子の網羅的な同定を行う。レンチウイルスを利用して、Cas9ヌクレアーゼとsgRNAライブラリーの両方をレポーター細胞に遺伝子導入して、変異細胞ライブラリーを作製する。この変異細胞ライブラリーから、ゴルジ装置から細胞膜への輸送が遅れる細胞を検出し、セルソーターで選別する。セルソーテイングを2回ほど繰り返して変異細胞を濃縮した後、この変異細胞群からゲノムを抽出する。ゲノムに含まれるsgRNA配列を次世代シークエンサーで同定する。選別しない変異細胞ライブラリーから抽出したゲノムをコントロールとして、検出されたsgRNA配列の中で、変異細胞群で濃縮されている遺伝子を候補遺伝子とする。得られた候補遺伝子がGPI-APsの輸送の遅れを引き起こす責任遺伝子であることを確認するために、レポーター細胞にこれら候補遺伝子のノックアウトを改めて導入した細胞株を樹立し、ゴルジ装置から細胞表面へのVFSbE-GPIの輸送を定量する。
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Causes of Carryover |
申請者の所属の異動があり、新しい研究室での実験環境のセットアップに時間を要したために、平成28年度の実験計画の(4)ゴルジ装置から細胞膜へのVFSbE-GPI輸送に遅延を起こす遺伝子の網羅的な同定を遂行しきれなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、平成28年度の実験計画の(4)にあったゴルジ装置から細胞膜へのVFSbE-GPI輸送に遅延を起こす遺伝子の網羅的な同定を行う費用とする。
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