2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14698
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
束田 裕一 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (90444801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 全能性 / 着床前初期胚 / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES細胞やiPS細胞が持つ多能性は個体を構成する全ての細胞種に分化できるが、自律的な個体形成はできない。一方、全能性は自律的な個体形成ができる細胞の能力であり、哺乳類では受精卵から桑実胚に至る前の着床前初期胚にのみその能力が備わっている。しかし、全能性の分子基盤は多能性に比べ解明が進んでいない。研究代表者らはマウス着床前初期胚における糖鎖修飾プロファイルを調べ、4細胞期胚が特異的な糖鎖修飾状態であることを見出した。マウスでは4細胞期胚までが全能性を有し、その後失われることから、4細胞期胚特異的な糖鎖修飾状態が全能性の分子基盤に深く関与する可能性が高い。そこで本研究では、全能性の消失と関連する4細胞期胚特異的糖鎖修飾が全能性の分子基盤において果たす役割を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、以下の研究を進めた。4細胞期胚特異的なタンパク質糖鎖修飾の責任分子の同定について、以下の解析を行った。まず、卵母細胞(GV期、MII期)、初期胚(1、2、4、8細胞期胚、桑実胚、胚盤胞期胚)のDNAマイクロアレイ解析およびRNA-seq解析を行い、トランスクリプトームの情報解析から4細胞期胚特異的な糖鎖の合成に関わる候補酵素を絞り込んだ。次に、受精卵への候補酵素のsiRNAをインジェクションすることにより、特異的糖鎖修飾が消失する候補酵素の探索を行った。また、胚性遺伝子の機能欠損は主に卵母細胞や受精卵へのsiRNAのインジェクションによるノックダウンが用いられているが、実験操作および機能欠損の効果を踏まえると汎用性が高いとは言えない状況である。そこで、CRISPR/Cas9システムをマウス受精卵にエレクトロポレーションにより導入することで、100%のマウス胚で標的遺伝子をノックアウトする方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究目的は、4細胞期胚特異的なタンパク質糖鎖修飾の責任分子の同定、4細胞期胚特異的な糖鎖修飾を持つタンパク質の同定、および4細胞期胚特異的な糖鎖修飾の発生における役割の解析である。 上記研究目的達成のための研究計画において、4細胞期胚特異的な糖鎖の合成に関わる酵素の探索、胚性遺伝子のノックアウト法の確立、4細胞期胚特異的な糖鎖修飾を持つタンパク質の同定などの研究計画はほぼ順調に進展しているが、4細胞期胚特異的な糖鎖修飾の発生における役割の解析については計画より遅れており、当初研究目的の達成度はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、H29年度の研究実施計画は4細胞期胚特異的な糖鎖修飾の発生における役割の解析、4細胞期特異的な糖鎖修飾構造の同定、4細胞期胚特異的な糖鎖修飾のタンパク質機能発現における役割の解析とし、以下のように研究を遂行する。まず、H28年度で遅れている4細胞期胚特異的な糖鎖修飾の発生における役割を明らかにする。次に4細胞期特異的な糖鎖修飾構造の同定を計画通りに遂行する。4細胞期胚特異的な糖鎖修飾のタンパク質機能発現における役割の解析については、本年度に確立したCRISPR/Cas9システムによる初期胚におけるノックアウト法(ノックアウト効率100%)を用いることで、H28年度の遅れを補い研究を推進する。
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Research Products
(3 results)