2016 Fiscal Year Research-status Report
新規発光型ATPバイオセンサーによる光合成生物内ATP動態の定量的解析
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16K14709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 博臣 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | BRET / 生物発光 / ライブイメージング / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実施計画として、(1)新規発光型ATPバイオセンサーの開発と(2)その特性解析及び培養細胞への導入を掲げていた。研究計画(1)については、発光タンパク質としてATP非消費型ルシフェラーゼであるnanoLucと蛍光タンパク質としてYFPのmVenusを用い、ATP濃度依存的構造変化を引き起こすεドメイン(Bacillus subtilis由来ATP合成酵素の一部)とそれらを結合させることにより達成した。作製したバイオセンサーはnanoLucの発光基質と反応し、主に青色の波長が検出される発光反応を示し、反応環境におけるATP濃度依存的にmVenusに由来した黄色波長の蛍光強度の変化が検出された。この波長変化率を用いて、ATP濃度を測定することが可能であった。研究計画(2)として挙げたBTeamの特性解析を行った結果、BTeamは他のヌクレオチド(GTP, CTP, UTP, ADP)とは反応せず、ATP特異的に反応することが分かった。また、pHは7.1-8.3の範囲で安定的にATPを測定できた。ATP測定可能範囲は、37度条件下で約0.5-6.0 mMであった。BTeamの応答は温度依存性を示し、温度の上昇に伴い測定範囲が高くなった。このことから、BTeamによるATP測定には、厳重な温度管理が重要であることが分かった。BTeamを細胞に発現させ、培養液に発光基質を添加することで、細胞から発光反応が観察された、得られた発光スペクトルを解析することで、細胞内のATP濃度を定量することが可能であった。従来の蛍ルシフェラーゼによるATP測定方法とは異なり、発光反応を用いて生きた細胞のATP濃度を経時的に定量可能である点がBTeamの最大の強みと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた28年度研究実施計画はすべて完遂できた。従って、現在までの進捗状況は良好であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究実施計画として、植物へのBTeamの導入を予定している。具体的な研究計画は、申請書に記した通りであるが、第一の目標は光合成における生きた植物細胞内でのATP動態を観察することである。現在考えられる懸念点としては、発光イメージングの際、BTeamの発光反応自体が光合成に及ぼす影響が挙げられる。例えば、発光反応で生じる二酸化炭素や、また発光そのものが光合成を促進してしまう可能性も考えられる。しかし、発現量の調節や、BTeamの改変などによりうまく対応し、研究目的を達成する。
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Causes of Carryover |
研究が当初の想定より順調に進み、消耗品等に使用する金額が予定を大幅に下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に新たに植物の発光イメージング系を立ち上げるために使用する予定である。
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Research Products
(11 results)