2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒトタンパク質の急速分解系の確立と分裂期特異的分解操作の実現
Project/Area Number |
16K14721
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清光 智美 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (10503443)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | オーキシン誘導デグロン / Ran / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] 本研究では、オーキシン誘導デグロン(AID)とCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を融合し、哺乳類細胞において任意のタンパク質を急速(30分以内)に分解できる新規実験系の確立を目指している。特に、核内輸送因子として間期で必須機能を担うRan関連遺伝子群を分裂期において急速に分解し、それらの表現型解析を行うことで、哺乳類細胞におけるRan関連因子群の分裂期機能を理解することを第一の目的としている。
[結果] 3種類のRan関連因子(RCC1, RanGAP1, Importin-beta)、およびRan-GTPの下流標的因子 NuMAとダイニン(DHC)の計5種類の遺伝子に対して、mAIDタグをノックインしたヒト細胞(HCT116)株の樹立に成功し、分裂期特異的に急速(30分-1時間)に分解できることも確認できた。またそれらの株において、NuMAやDHC遺伝子にmCherryをノックインしたダブルノックイン株を樹立し、AID標的因子の分解後にNuMA-mCherryやDHC-mCherryの動態を生細胞で観察することに成功した。分裂期中期停止細胞において、RCC1を分解すると紡錘体の長さの短縮がみられ、またNuMAやダイニンを分解すると、紡錘体極の収束が崩壊する様子が観察された。
[意義・重要性] これまでヒト細胞において、RCC1(Ran-GEF)およびRanGAP1(Ran-GAP)を分裂期特異的に分解できる実験系は存在しなかった。またImportin-betaやNuMA等、Ran-GTPと相互作用する因子や下流標的因子の動態を同時に可視化する道も拓けた。各種デグロン株の分裂期表現型を包括的に解析することで、Ran関連因子の分裂期機能を総合的に理解できれば、新規な知見の発見につながると期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に提案した通り、おおむね順調に進んでいる。具体的には、3種類のRan関連因子(RCC1, RanGAP1, Importin-beta)、およびRan-GTPの下流標的因子 NuMAとダイニン(DHC)の計5種類の遺伝子に対して、mAIDタグをノックインしたヒト細胞(HCT116)株の樹立に成功し、分裂期特異的に急速(30分-1時間)に分解できることも確認できた。またそれらの株において、NuMAやDHC遺伝子にmCherryをノックインしたダブルノックイン株を樹立し、AID標的因子の分解後にNuMA-mCherryやDHC-mCherryの動態を生細胞で観察することにも成功した。RCC1を分裂期中期停止細胞において分解すると、紡錘体の長さの短縮がみられたことから、現在、Ran-GTPの下流として紡錘体構造に機能する標的候補因子の可視化を試み、その表現型の分子的理解を進めている。またNuMAやDHCを分裂期中期停止細胞で分解すると、RCC1の分解とは異なり、紡錘体極の収束に異常が観察された。これらの表現型を包括的に理解すべく、その他のダイニン関連因子の分解や、NuMAとダイニンの紡錘体極での制御等について研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ran関連因子(RCC1, RanGAP1, Importin-beta)、NuMAおよびダイニン関連因子それぞれについて、デグロン細胞の分裂期表現型を解析し、論文作成に進める。特に、高濃度のノコダゾール(微小管重合阻害剤)添加により分裂期紡錘体構造を完全に壊した条件で、Ran関連因子を分解し、その後、ノコダゾールを洗浄して微小管が形成される様子を詳細に生細胞で観察する。またNuMA以外のRan標的候補因子として知られている紡錘体形成因子の局在を同時可視化し、Ran-GTPの増減によるこれらの因子の振る舞いと表現型の関連を解析する。またRanによる細胞皮層因子(LGNやNuMA、Anillin等)の制御についても解析を進める。一方、NuMAとダイニンの紡錘体極の収束維持機能を理解するために、その他のNuMA、ダイニン結合因子(ダイナクチンp150、LIS1など)のデグロン細胞を作成し、表現型を包括的に評価する。 また上記2テーマについての論文作成を第一に進める一方で、HCT116細胞以外のヒト不死化細胞株(hTERT-Rpe1細胞)やマウスES細胞等での、デグロン細胞株の樹立も進め、細胞種間でも表現型を比較できるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
細胞培養関連、およびゲノム編集用プラスミド作成の消耗品を節約することができたため、翌年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
順調に進めば、次年度ではヒト細胞以外にマウスES細胞を用いてゲノム編集を行う予定である。ヒト遺伝子におけるゲノム編集の結果をもとに、マウス遺伝子のゲノム編集を行うが、その際には一部ヒト細胞に用いたゲノム編集用のプラスミドは使用できず、新たに作成する必要がある。繰り越した予算はそのプラスミド作成等に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)