2016 Fiscal Year Research-status Report
非典型的Wnt経路と翻訳抑制による繊毛の本数と中心体個数の制御についての研究
Project/Area Number |
16K14732
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安達 健 神奈川大学, 理学部, 助教 (10598113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 繊毛 / Wnt経路 / mRNA Decapping / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに線虫のmRNAデキャッピング蛋白質の変異体、ならびにWnt経路を構成するROR型受容体遺伝子の変異体が繊毛形態形成に異常を示すことを見出している。 線虫には4種のFrizzled受容体遺伝子があるが、これら遺伝子の単独の変異は顕著な繊毛形態異常を引き起こさないことが分かった。これら受容体遺伝子は機能的に冗長性があるものと推測された。またRyk受容体およびVan Gogh受容体遺伝子の変異体も顕著な異常は示さないことが分かった。 線虫には5種のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)遺伝子が存在し、HSPGはWnt経路の活性を調節することが知られている。これらの遺伝子のうちひとつの変異体では、繊毛形態異常が観察された。今後、他4種のHSPG遺伝子についても解析を進める予定である。 mRNAデキャッピングはsmall RNAによるmRNA分解の過程で促進される。はじめにmiRNA合成に関わる遺伝子の変異体に着目したが、解析した限りでは繊毛形態形成に異常は観察されなかった。さらにmiRNA依存的mRNA分解時に機能する遺伝子の変異体について解析したところ、繊毛形態に異常を示すとの予備的な結果を得た。現在、正確を期すために、より詳細な解析を進めている。 翻訳阻害剤のcycloheximide存在下で飼育した線虫は、mRNAデキャッピング蛋白質の機能低下変異体と類似した表現型を示すことが分かった。この結果は、mRNAデキャッピング蛋白質の変異体ではタンパク質の発現量が亢進することを考慮すると、予想に反する結果であった。しかしcycloheximideの添加によりP-bodyの形成が抑制されるとの知見を考えると、興味深いといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Wnt経路による繊毛形態形成の制御機構について、着実にデータを収集することができた。またヘパラン硫酸プロテオグリカンについての解析も開始した。 mRNAデキャッピングによる繊毛形態形成の制御では、miRNA依存的mRNA分解が関わることを示唆する知見を得たため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Wnt経路上の複数のFrizzled受容体遺伝子の機能を解析するために、これらの多重変異体を作成し、繊毛形態への影響を検討する。また繊毛形成において機能するWnt経路の下流因子を探索する。 繊毛形態形成におけるmRNA分解のメカニズムを解析するために、miRNA依存的mRNA分解に関わる因子をさらに詳細に解析し、RNA-seqや抑圧変異体スクリーニングにより標的mRNAを探索する。
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Causes of Carryover |
2016年度直接経費120万円のうち、約113万円を蛍光顕微鏡の購入に充てた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額の約7万円は2017年度に試薬等の消耗品の購入に充てる計画である。
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