2017 Fiscal Year Annual Research Report
非典型的Wnt経路と翻訳抑制による繊毛の本数と中心体個数の制御についての研究
Project/Area Number |
16K14732
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安達 健 神奈川大学, 理学部, 助教 (10598113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 繊毛 / Wnt経路 / デキャッピング / ヘパラン硫酸プロテオグリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、線虫(C. elegans)の繊毛形成における、Wnt経路、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、mRNAデキャッピングの役割について解析した。 Wntリガンド遺伝子の変異体では繊毛が短縮しており、Ror受容体の変異体では繊毛の形態に異常が見られた。この結果から、Wnt経路は感覚神経細胞内か、あるいは繊毛を包むグリア細胞において機能する、といった可能性が考えられた。 他モデル生物の研究ではヘパラン硫酸プロテオグリカンがWnt経路によるシグナル伝達に必須と考えられている。線虫のヘパラン硫酸プロテオグリカン遺伝子の変異体では、繊毛形態に顕著な異常は見られなかった。 線虫の繊毛の形態異常は化学走性の低下を引き起こす。Wntリガンドの変異体は塩化ナトリウムに対する化学走性が顕著に低下していた。この結果の原因は、Wnt経路の欠損による繊毛機能を低下、あるいは変異体の運動性低下と考えられるが、原因がいずれであるかは特定できなかった。 mRNAデキャッピング酵素遺伝子の変異体では繊毛の形態が異常となる。mRNAデキャッピングは、poly(A)-tailの除去、miRNAによるmRNA分解に関わる。これらの過程に関わる遺伝子の変異体を多数解析したが、繊毛形態の異常は今のところ観察されていない。mRNAデキャッピングは、想定外の過程を介して繊毛形成に寄与している可能性がある。近年の研究により、mRNAのキャップ構造は多様であり、キャッピング・デキャッピングに関わる遺伝子も数多くあることが示唆されている。今後は、これらの結果を踏まえ新しい視点から研究する必要があると思われる。
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