2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14733
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小笠原 慎治 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (50462669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / mRNA / 翻訳 / 発生生物学 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、発生中の胚でタンパク質発現の時空間動態を光で人工的に操作する方法を確立することが目的であった。28年度はmRNAからタンパク質への翻訳過程を操作するための新規光応答性化合物を有機合成し、レポーターに蛍光タンパク質を使 い、ゼブラフィッシュの胚で翻訳の操作能を評価を行った。また29年度に実施予定であったsquint遺伝子の発現操作実験の一部にも着手した。 翻訳は mRNA の 5’末端に付加されている 7-メチルグアノシン(cap)と翻訳開始因子(eIF4E)との結合によって始まる。この結合を光制御することで翻訳過程を光操作するシステムのプロトタイプは以前開発済みであったが、異性化に310 nm の光を必要とし、ゼブラフィッシュの胚に照射すれば大きなダメージを与えてしまう。そこで、可視光で異性化させられるよう分子設計から一新した。具体的にはcapの2位へアゾリンカーを介して芳香族化合物を導入した。アゾ基の n-π*遷移の吸収により異性化波長が可視光になると予想されたからである。その結果、370 nmと430 nmの光で異性化させられるようになった。また、蛍光タンパク質のmRNAをゼブラフィッシュの胚へインジェクションし発現量の差を評価したところ、翻訳が起こる時のタンパク質発現量は翻訳が起こらない時に比べおよそ7倍であり、当初の目標値(5倍)を達成できた。 続いて29年度に実施予定であったsquint遺伝子の発現操作実験を行った。1細胞期の胚へsquint_mRNAをインジェクションし8細胞期に局所的に370 nmの光を照射しタンパク質を発現させ、その4.5時間後430 nmの光を照射し発現を停止させた。その結果、双頭の稚魚が誕生した。比較実験の結果からsquint遺伝子には体軸を形成させる機能がある一方で頭部の形成を阻害する副作用があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゼブラッフィッシュの胚中で遺伝子発現を光操作できる発生生物学に適応した光遺伝学手法を開発することに成功した。これは28年度における目標であっため、それを達成したと言える。また29年度に予定していた実験の一部にも着手し成果を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は本課題で最も重要であった発生生物学に適した新規光遺伝学手法を開発することに成功した。29年度は当初の研究計画通りメッセンジャーRNA(mRNA)の細胞内寿命を延ばす方法の検討を開始する。通常、mRNA は胚内で RNase によって数時間以内に分解されてしまう。ゼブラフィッシュの発生が完了するまでの24時間の間、導入した mRNA が胚内に十分残っている必要 がある。そこで、胚内での mRNA の半減期を24時間以上にする手段を見出す。mRNA の分 解は 3’末端のポリ A の短縮によって引き起こされる。これを防ぐためポリ A 伸長シグナル配列を mRNA の3’非翻訳領域に付加する。それでもmRNA の半減期が24時間以上に到達しない場合は、mRNA を徐々に放出するドラッグデリバリーシステムの導入を検討する。ドラッ グデリバリーシステムを使うと最長 5 日間継続して mRNA を胚内に存在させられる可能性がある。 28年度に29年度予定していたsquint遺伝子の発現操作実験の一部を行った。その成果を踏まえ、29年度も引き続きsquint遺伝子の形態形成へ及ぼす影響を開発した光遺伝学手法を用いて調べる。squint遺伝子 の発現場所や 発現期間を操作し形態へ及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(3 results)