2016 Fiscal Year Research-status Report
脊椎動物の器官の大きさを規定するクオラムセンシング機構
Project/Area Number |
16K14737
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 貴輝 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (60403333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 器官サイズ / クオラムセンシング / FGFシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
最近申請者は、ゼブラフィッシュの左右差を規定する器官(クッペル胞)の形成において、クッペル細胞の数を閾値以下に減らすと、器官の機能・形態形成不全が起こり、左右差異常が誘導されることを発見した。この結果は、細菌などで知られている「クオラムセンシング」の機構が器官の機能・形態形成に関与する可能性を示唆している。クオラムセンシングは、一部の細菌が持つ細胞社会性の獲得機構の一つである。化学物質(autoinducer;AI)を分泌する細菌が低い密度で生存しているときには、生成したAIは拡散してしまうが、細菌の密度が高くなると、AIの濃度高くなり、その環境に存在する細菌すべてが、AIに依存して遺伝子発現などを一斉に開始するのである。クッペル胞前駆細胞はFgf8aを分泌し、Fgf8aのシグナルに応答して細胞集団形成が制御されるので(業績;Matsui et al., PNAS 2011、松井, 細胞工学 2014)、fgf8aがクオラムセンシングを担うAIであることを予想している。これを検証するために、H27年度には、Fgf8a-mVenusを発現するトランスジェニックフィッシュ(Tg)を作成を試みた。ベクターを構築し、Fgf8a/aceのヘテロ胚にマイクロインジェクトすることで、TgのF0世代を得たが、多くの個体は奇形があり、生魚まで生育したものは少なく、F1世代のTg陽性の胚は得られたものの蛍光強度が低く、定量解析に利用できるTgラインは得られなかった。一方、FGFシグナルの細胞内活性化レベルをライブイメーシングできるTgに関しては、異なるプロモーター支配下で十分な感度のラインが得られたので、クッペル胞のサイズとシグナル強度の関係性を定量評価できる準備は整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に遅れが出そうだったので、追加の研究を行い、この仮説を証明できる系を追加で構築できたので、概ね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
Fgf8a-mVenusのTgラインの樹立を再度試みるとともに、WTの状況で、FGFシグナルの活性化レベルとクッペル胞のサイズの関係性を定量的に解析する。さらに、FGFシグナルを可視化できるTgとFgf8a変異体を交配することで、Fgf8aの量、シグナル強度、クッペル胞のサイズの3者の関係性を解析する。さらに得られたデータを利用して数理モデルを構築する。
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