2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14739
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 有紀 九州大学, 医学研究院, 講師 (90508186)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクアポリン / 血管内皮細胞 / 血球分化 / 造血 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞と血球細胞は胚体外中胚葉の血島において共通前駆細胞から分化する。両者はやがて空間的に分離され、心臓の拍動開始と共に血球が血管内を循環する。血球・血管分化を制御する分子群は詳細になっているが、最初に出現する血液の「水分」がいつどのようにして適切に血管内へ取り込まれるのかは全くの謎である。本研究では胚発生初期の血管内への水分の流入機構を解明する為、水チャネル分子Aquaporin(AQP)に焦点を絞り、その役割の解析を行っている。 平成28年度は、AQPファミリーのうちAQP1, 5, 8, 11のcDNAをウズラ胚から単離し、in situ ハイブリダイゼーションによる発現解析を行った。その結果、これらのAQP遺伝子群が一次造血および二次造血の場において発現することが明らかになった。またAQP1に対する抗体を作製、免疫染色実験を行い、AQP1が血管内皮細胞および血球細胞において細胞膜に局在することを確認した。 血管内皮細胞におけるAQP1の役割を調べるため、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いてAQP1の強制発現実験を行なったところ、本来は扁平な血管内皮細胞がAQP1によって血球様の細胞へ形態を変化させることがわかった。さらに、生体内(ウズラ胚)においてもAQP1の強制発現実験を行なったところ、上皮組織から球形細胞への転換を引き起こすことがわかった。以上の結果から、AQP1を介した水の流入が、血球分化の際に見られる細胞の形態的変化に関わる可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に行なった実験結果から、水チャネルAquaporin (AQP)が血球細胞の分化過程に関わる可能性が示唆された。扁平な血管内皮細胞から球形の血球を出芽・遊離させる細胞生物学的な分子機構は全く知られておらず、本研究成果をこの謎を解明する糸口になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Tet-ON発現誘導システムを用いたAQP1の発現誘導実験をヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)について行い、AQP1の発現と細胞形態の変化をタイムラプス観察解析する。さらに、細胞接着分子群(VE-カドヘリンやアクチン細胞骨格、細胞外マトリスク)の動態についても観測を行い、血管内皮細胞からの血球細胞遊離機構を詳細にする。 本研究は、当初、血液の液性成分の大部分を占める「水」の取り込み機構について解明する為にAQPに着目した。この可能性についても引き続き検証を行う。初年度に単離したAQP5, 8, 11についてPGK:H2B-mCherryトランスジェニックウズラ胚においてマルチプルノックダウンを行い、タイムラプス観察により血液量、血流動態をモニターする。
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Causes of Carryover |
遺伝子の単離や解析などの消耗品の購入を必要とする実験がトラブルなく順調に進捗した為、初年度の物品費に余剰が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いてAQPファミリーの抗体作製や血球細胞マーカー抗体の購入を行い、初年度の研究成果をさらに発展させる。
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Research Products
(3 results)