2016 Fiscal Year Annual Research Report
Trial to generate totipotent cells
Project/Area Number |
16K14744
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 俊輔 国立研究開発法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 上席研究員 (00124785)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 全能性細胞 / ES細胞 / 2細胞期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
体細胞のリプログラミングには、Gurdonらによる核移植とYamanakaらによるiPS細胞の作製がある。前者では、胎盤を含むすべての組織になり得る全能性細胞ができ、後者では、iPS細胞はES細胞と同様に多くの組織・細胞に分化することができるが、胎盤に分化することはできない。核移植によるリプログラミングは semi in vivo の方法であり、試験管内で体細胞から全能性細胞を作製する方法はまだ確立されていない。体細胞から全能性細胞を作製することは、生命科学分野における大きなマイルストーンである。また応用面でも、「iPS細胞からすべての体細胞に効率良く分化させることが難しい」という、再生医療分野での問題の解決にも寄与し得る。 2012年にPfaffらにより、ES細胞集団には全能性細胞がごくわずか(0.5%)存在し、2つの状態が平衡状態にあることを報告された。彼らは2細胞期胚に発現するMERV(Mouse Endogenous Retrovirus)をマーカーとして、このような細胞を濃縮し、キメラマウスを作製し、胚体と胎盤の両方に分化することを示した。一方私達は卵子に多く存在するヒストンバリアントが、核移植に似たメカニズムでiPS細胞作製を促進することを報告した。本研究では、この延長として、ES細胞と、全能性を有する4細胞期胚との遺伝子発現パターンを比較し、後者で発現の高い一群の遺伝子を選び、これらの候補遺伝子が全能性細胞のマーカーになり得るかどうかを検討した。その結果、ある細胞膜タンパク質の発現レベルが高いES細胞を用いてキメラマウスを作製すると、これらの細胞は胚盤胞で将来胚になる内部細胞塊と将来胎盤になる栄養外胚葉(Trophectderm)の両方に分化する確率が高いことが示された。このように、本研究は体細胞から全能性細胞を作製する試みに大きなヒントを与えるものである。
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