2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流体デバイスを用いた植物1細胞サリチル酸応答解析
Project/Area Number |
16K14750
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
別役 重之 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80588228)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物免疫 / 植物ホルモン応答 / イメージング / 一細胞解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物防御応答に重要な分子サリチル酸(SA)は細胞内/細胞間での自己シグナル増幅制御機構を持つ。このような分子に対する細胞応答機構を明らかにするには、多細胞体を用いた研究では出力が複雑になりすぎるため、一細胞レベルでの解析が必須である。そこで、本研究ではSA応答性プロモーターレポーター植物由来のプロトプラストをマイクロ流体デバイス内に封入し、タイムラプスイメージングと組み合わせることで、様々なパターンでのSA刺激下で、定量的な一細胞レベルの細胞応答を測定する系を構築し、SA シグナル系分子機構のさらなる理解を進めることを目指している。H28の成果としては、すでに構築済みであった核局在型eYFPを用いたPR1レポーター植物に関して、防御応答変異体と交配した後代でほとんどサイレンシングを受けることが明らかとなり、今後の遺伝学的な解析に支障をきたすことが明らかとなった。これまでに構築し、主に用いていた3種のラインは、すべて遺伝学的には1コピー挿入体に見えるが、最大20コピーほど同一座位に挿入されていることが定量的PCRにより示され、これがサイレンシングの主要な原因になっていると考えられた。そこで、成熟が早く、かつ半減期が短い、より鋭敏なレポーターである核局在型Venusを用いたレポーターコンストラクトを再度作製し、植物に形質転換し、現在、定量的PCRを用いて真の1コピー挿入形質転換を選抜しようとしている。また、この第二世代レポーター植物では、植物成熟細胞が核相を増やした場合に一細胞あたりのレポーターコピー数が増え、蛍光シグナルが強く観測される問題などにも対処できるよう、内部標準となるAct2遺伝子のプロモーターレポーターを核局在型eCFPにより構築し、上記PR1と同一コンストラクトに挿入してある。これらにより、より実用的な測定系を構築できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H28においては、まず研究代表者の異動に伴い、研究の進捗に大きな遅れが生じた。しかし、偶然見出したサイレンシング問題に関しても、その期間をうまく使いつつ、第二世代のレポーター植物の準備を開始することができ、この第二世代レポーターの利用は、H29の遺伝学的解析実験に大きなアドバンテージとなると考えられる。また、異動後の現職においては研究グループ内でマイクロ流路デバイスを自身で設計・作製・利用する環境が既にあったため、今後の研究の飛躍的なスピードアップが期待される。また、異動にともないより低光障害で正確なタイムラプスイメージングを行うことができる高感度共焦点顕微鏡も利用可能となり、本研究遂行のためにさらに良い研究環境となった。以上のように、H28は本研究の進展が遅々とした年度ではあったが、H29におけるより効率的な本研究の遂行に資する年度でもあった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、H28での研究代表者の異動に伴う研究進展の遅れがあったが、 H29においては、H28に計画していたマイクロ流路系の条件設定、サリチル酸の濃度や処理方法によるPR1プロモーター活性の観測実験、それに対する防御応答変異の与える影響調査など、研究計画に記した内容を一つ一つ行なっていく。当初の予定だとH29に直面していたであろう多くの潜在的な問題がH28の予期せぬ様々な困難との遭遇により解決したはずであるので、研究期間は限られるが効率的に当初の予定に沿って進めていきたい。
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Research Products
(3 results)