2017 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms for redox homeostasis studied by Chlamydomonas phototaxis
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16K14752
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
若林 憲一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80420248)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラミドモナス / 緑藻 / 走光性 / 光合成 / 鞭毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、単細胞緑藻クラミドモナスの走光性ミュータントを解析することによって細胞内レドックス恒常性の調節因子の分子的実態を明らかにすることにある。 クラミドモナスは眼点で光を受容し、2本の鞭毛を操って光源方向に向かう正の走光性または逆方向に逃げる負の走光性を示す。数年前に、我々は走光性の正負が細胞内の酸化還元状態を反映しており、酸化的だと正、還元的だと負の走光性をそれぞれ示すことを見出した。細胞内は通常は還元的に保たれる恒常性が働いているが、呼吸や光合成活性変化に応じて酸化的・過還元的に変化する。我々は、クラミドモナスの走光性の正負切り替え異常ミュータントが得られれば、その解析によって恒常性のしくみが分子レベルで理解できると考えた。 ミュータントは「常に正の走光性」株2つ、「常に負」株1つが得られ、走光性以外の表現型解析を行った結果、全て葉緑体内の電子伝達経路に異常があることがわかった。原因遺伝子は次世代シーケンス(Illumina HiSeq)によって解析を行った。現在まだ遺伝子相補実験による確認ができていないが、原因遺伝子候補はデータベース上ではいずれも葉緑体外に局在することが予想されていた。これらのタンパク質は未知の光合成の調節経路、それを介した細胞内レドックス状態のメンテナンスのメカニズムに関与している可能性があり、研究期間を延長した間に確定できるように解析を急ぐ。 さらに、副産物的な結果として、新たに走光性を全く示さない株を単離した。この株は鞭毛打の位相がずれているため、効率的な方向転換ができない。この株の解析により、これまで分かっていなかった2本の鞭毛の同期のメカニズムが明らかになる可能性がある。本課題の目的とはずれるが、将来的な研究テーマの材料を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2つの理由からなる。まず、予定通りミュータントの単離と原因遺伝子解析のための全ゲノム解読は行えたが、原因遺伝子の確定のためには相補実験が必要である。原因遺伝子候補はどれも長く、かつGC含量がかなり高いため、相補実験の遺伝子コンストラクト作りに難航した。もう1つは、研究代表者の家族が体調を崩したため、その介護のため2017年度後半の研究に割ける時間が激減した。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子が確定したならば、その遺伝子産物の機能や局在、相互作用タンパク質などを解明することにより、どのような作用機序で光合成電子伝達に関与するのかを明らかにする。さらに、その遺伝子の進化的な保存性を検証することによって、その調節経路の生物種間での比較を行う。 将来的には強光耐性が高い植物の作成など、応用方向への展開も検討する。
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Causes of Carryover |
研究が予定より遅延したこと、また研究代表者の家族の体調不良により介護時間確保のために2017年度の研究時間が予定より減少したことにより、研究期間を延長したため。
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Research Products
(21 results)