2016 Fiscal Year Research-status Report
植物感染性線虫を用いた分子遺伝学的研究手法の確立と展開
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16K14757
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
澤 進一郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (00315748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物感染性線虫 / M. incognita |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物感染性線虫の感染過程において、線虫側で働く遺伝子を同定するために必要な分子遺伝学的解析技術を確立すると共に、新しい線虫培養法の確立も目指している。これまで、線虫培養にトマトを宿主として用いていたが、トマトは大型で無菌栽培できず、培養中の線虫のコンタミの恐れもあるため、野生型線虫、1系統のみを維持するにとどまっていた。本研究では、スクリーニングなどにより得る多系統の線虫を維持・管理する必要があるため、大型トマトを使わず、閉鎖系(プレート内)で線虫が培養、維持できる新しい系を確立する。その目的のために、本年度は、トマトをプレート内で生育させ、プレート内で、線虫を感染させる実験系の構築を試みた。その結果、10cm径の丸形シャーレにトマトで1株生育させ、1プレートあたり150頭のサツマイモネコブセンチュウを感染させた場合、1週間ほどで根瘤の形成が確認出来た。このことから、閉鎖系でおいても、線虫の感染と培養が可能であることが示唆された。本研究により、線虫培養系の多様性が担保できると考えている。 一方、我々は、線虫のCLE 遺伝子を含めた様々なエフェクター遺伝子が植物への感染に関与することを明らかとしているが、本研究では、線虫遺伝子の線虫内でのノックダウンや過剰発現等の遺伝子操作に加え、線虫突然変異体のスクリーニングを可能にする系を確立し、線虫側の遺伝子機能解析を行う。そのために、本年度は、RNAi研究の実施のためのベクターの構築を行い、それに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大きく2つの研究を行っている。(1)閉鎖形でのトマトへの感染による線虫維持実験系の開発と(2)線虫内でのRNAiを行う事による線虫遺伝子の機能解析の試みである。(1)では、トマトの品種に関しても検討を行った。ホーム桃太郎、cf小鈴を用いた場合は、線虫感染がほとんどみられず、これらを線虫の維持の為のホストとして用いるのは適切では無いと考えられる。一方、プリッツには極めて多くの根瘤が形成されたことから、プリッツをホストとして用いることが望ましいこともわかった。また、1個体(プレート)あたり、1線虫、5線虫、10線虫程度では、プリッツであっても根瘤形成率が悪かったことから、150匹/プレート程度が望ましいことが明らかとなった。研究(2)では、サツマイモネコブセンチュウから、5つのCLE遺伝子候補を単離した。また、これらの遺伝子候補に対して、RNAiを行う為のベクターの構築が完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の研究を継続して行う。研究(1)では、閉鎖形プレートの中でのトマトへの線虫感染を継続し、雌が大人へと成熟するか、また、成熟した雌が、卵塊を作ることが可能かどうか、確認する。また、研究(2)では、線虫へのRNAiを実施し、どの程度線虫内での遺伝子発現が抑制できるかを検討する。これらの研究を継続して行う事で、植物感染性線虫の感染過程において、線虫側で働く遺伝子を同定するために必要な分子遺伝学的解析技術を確立すると共に、新しい線虫培養法の確立も目指す。
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Causes of Carryover |
28年度に植物感染性線虫を用いた分子遺伝学的研究手法の確立と展開を行うにあたって、プレート内でトマトを生育させ、そこにセンチュウを感染させるという研究を行った。その目的のために、植物育成補助を行う研究補助員を雇用する予定であったが、熊本地震の影響で適任者がみつからず、雇用費、ならびに、それに付随する研究物品費を消化することが出来なかった。この研究に関しては、学生や他の研究員により、順調に進んでいるが、効率が悪くなっていた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、新たに、Ngan Bui Thiさんを研究補助員として雇用することになった。彼女は線虫培養の専門家で、彼女の参加により、本研究はかなり効率化すると考えている。今年度、トマトへの線虫感染後の成熟した雌の発生効率を調査するだけで無く、卵塊の形成の効率に関しても効率的に調査することが可能となった。また、サツマイモネコブセンチュウに対するRNAiの実施に関しても、新規雇用の決定により、問題なく、効率的に行えると考えている。
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