2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14758
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
和田 正三 首都大学東京, 理工学研究科, 客員教授 (60011681)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 葉緑体運動 / 信号伝達 / 光受容体 / 青色光 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、葉緑体集合反応において、光受容体から葉緑体まで伝達される信号の性質を明らかにし、信号が物質として移動しているのか、移動を伴わない情報の伝達であるのか、どのような現象であるのかを推察することを目的としている。 光受容体(phot)から発せられる集合反応の信号は、25℃では1分間に1マイクロメーターという遅い速度で伝達されるが、15℃、20℃、25℃、30℃での信号伝達速度を計測した結果、信号伝達速度は温度が10℃上昇するとほぼ2倍となり、物質の単なる拡散ではなく、化学反応を介した伝達であることを示唆した。また信号は細胞膜に密着している葉緑体と細胞膜の間を時間的な遅延もなく通過すること、微小管の阻害剤オリザリンを投与しても信号伝達速度には影響のないこと、細胞の極性には無関係であることが明らかになった。これらの結果はJournal of Plant Researchに受理され、現在印刷中である。信号伝達因子を明らかにする目的で行った、信号伝達を阻害する物質の探索(ケミカルスクリーング)では、理化学研究所 環境資源科学研究センター 化合物リソース開発研究ユニットからNPDepo標準化合物ライブラリーセットを提供していただき、ホウライシダ前葉体の暗黒定位、集合反応、逃避反応に対する影響を調べた。その結果、数種類の物質が候補として選抜され、さらに詳しい影響を調べるため、シロイヌナズナでも影響を調べている。 申請時には予想もつかなかった新たな研究課題が見つかったことも大きな成果である。従来葉緑体運動に炭酸ガスが影響することはわかっていたが、集合反応の信号伝達に優先的な影響を持つことが示唆され、来年度の重要な課題となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定であった3実験に対して、下記の結果を得た。 ①の低温下における信号伝達速度の解析、②の細胞骨格系の信号伝達速度の対する影響については、結果をまとめた論文が受理され、現在印刷中である。 ③のケミカルスクリーングはシダの胞子から発達した前葉体を材料に、暗黒定位、集合反応、逃避反応に対する影響のある物質の探索を行った。特に集合反応を阻害する物質数種が見つかり、現在さらにその影響をシダ、およびシロイヌナズナを使って検証中である。 さらに、申請時の予定にはなかったが、非常に重要な新たな研究課題(葉緑体運動における炭酸ガスの影響)が発見され、28年度には集中的な実験を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ケミカルスクリーングについてはさらに詳しく影響を調べる。特に検証したケミカルのうち、約半数は細胞が死亡しており、詳しい解析ができていない。投与した濃度が高すぎたと思われ、今後さらに希釈してその効果を調べる。 今年度炭酸ガスが葉緑体運動の信号伝達に大きな影響を与えていることが判明し、29年度の研究計画に加えて、この研究を主要な1課題とする。炭酸ガスが葉緑体運動の一連の流れのどの部分に影響を与えているかが、最初に見極めるべき課題となる。
|
Causes of Carryover |
信号伝達に影響する化学物質の探索(ケミカルスクリーニング)を行なってきたが、実際に効果のあるものが確実に絞られていないため、その後の解析用に必要な実験ができていない。物質確定後に行う実験に必要な化学薬品や器具の購入費が未使用になっているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実際に効果のある物質が特定された時にはその解析用に使用する。 また、今年度新たに重要な課題が発見されたので、その解析用に使用する。
|
Research Products
(3 results)