2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14768
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 芳樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (70444099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物 / 遺伝学 / 進化 / 葉緑体核様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞呼吸や光合成の中枢として機能するミトコンドリア(以下mt)や葉緑体(以下cp)は独自のゲノムをもつ。これらmt/cpゲノムはDNA-タンパク質複合体(核様体)を形成している。mt/cp核様体は、mt/cpDNAの折り畳み、複製、組換え、修復、遺伝子発現や遺伝などの機能ユニットとして重要であると提唱されてきたが、その動態制御については殆ど知見がない。本研究ではマイクロ流体プラットフォームを基盤とするライブイメージング技術によってcp核様体の動態を詳細に捉えることを目指すとともに、cp核様体の形態異常を示す変異体群の順遺伝学的解析およびRNAseq解析をおこなうことで、葉緑体の染色体ともいうべきcp核様体の動態制御のメカニズムを、遺伝子レベルで明らかにすることを目指してきた。
葉緑体核様体は、葉緑体のチラコイド膜にアンカーされた、個々が独立した球状の構造であると信じられてきた。これまでに我々は、cp核様体の動態をライブイメージングによって捉える系の確立に成功し、葉緑体分裂に伴って葉緑体核様体が球状構造からネットワーク構造へと変化し、分裂完了後に球状構造に復帰するというダイナミックな挙動が明らかになった(論文準備中)。 これと併行して、葉緑体核様体の形態制御機構については、cpDNAの組換えを制御するRecA遺伝子の発現量を増減させると、cp核様体の形が劇的に変化することが明らかになり、cpDNAのトポロジーとcp核様体の関連性が示された(Odahara et al. Plant Phys. 2016)。また、cp核様体が1つになってしまうmoc変異体の解析において、その原因遺伝子の同定、機能解析に成功した(Kobayashi et al., 審査中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
葉緑体核様体は、葉緑体における染色体ともいうべき構造体である。しかしその動態及び制御機構についてはほとんど明らかでなく、むしろ静的な存在として議論されることが多かった。 本研究ではまず、葉緑体核様体の動態を生きた細胞で捉えることに成功した。球状構造がネットワーク構造へと柔軟に変化していく過程の発見は、今のところ世界初の報告となるはずである(論文準備中)。また、RECAというたった1つの遺伝子の発現を増減させることで、葉緑体核様体の形が劇的に変化することを発見した(Odahara et al., Plant Phys. 2016)。これと併行して、我々は葉緑体核様体が1つの塊になってしまうmoc変異体の原因遺伝子の解明に取り組んできた。この変異体は単離されてから約20年間、原因遺伝子が不明なままであったが、最新のゲノム情報、マッピングデータ、TAIL-PCR技術を駆使し、ついに候補遺伝子の絞り込みに成功した。この遺伝子MOC1は緑色植物に広く保存されており、シロイヌナズナにおいて相同遺伝子の発現を減少/欠損させると、生育が著しく損なわれ、葉緑体核様体が異常になることが明らかになった。そしてさらに、組換えタンパク質を精製し、その活性を生化学的に解析した結果、これがこれまで葉緑体では発見されていなかった相同組換えの重要制御因子である可能性が示された。 以上のように、本研究では当初の計画以上の成果が上がりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
葉緑体核様体のライブイメージングに関しては、野生株だけでなく、moc変異体やRecA過剰発現体における葉緑体核様体の挙動を観察してデータを充実させ、論文発表を目指す。また葉緑体核様体の変化と葉緑体DNAの複製の関連性について解析するため、チミジンのアナログであるEdUを用いた新輝合成葉緑体DNAの可視化を行う。 葉緑体核様体が1個の塊になってしまうmoc変異体の原因遺伝子解析については、MOC1組換えタンパク質の生化学的なin vitro解析を行ってデータを揃え、早期の論文発表を目指す。またこれまでの実験から、MOC1タンパク質は二量体を形成する可能性が示唆されているが、この二量体形成とMOC1タンパク質の作用機構の関連性についても、質量分析などの詳細な解析を行うことで明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度に論文発表のための英文校閲費、投稿費、別刷り代、カラー印刷代、オープンアクセス費などが当初の想定以上に高額になることが予想されたこと、また実験試料の受託解析において、サンプルの生育条件の最適化や業者の絞り込みに予想以上に時間がかかり、それが次年度にずれ込んでしまったことなどから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文発表のための英文校閲費、投稿費、別刷り代、カラー印刷代、オープンアクセス費として支出する。また葉緑体核様体の質量分析を行う。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Sequence of the Gonium pectorale Mating Locus Reveals a Complex and Dynamic History of Changes in Volvocine Algal Mating Haplotypes.2016
Author(s)
Hamaji, T., Mogi, Y., Ferris, P.J., Mori, T., Miyagishima, S., Kabeya, Y., Nishimura, Y., Toyoda, A., Noguchi, H., Fujiyama, A., Olson, B.J., Marriage, T.N., Nishii, I., Umen, J.G., *Nozaki, H.
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Journal Title
G3
Volume: 115
Pages: e026229
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Identification of a Holliday junction resolvase in chloroplasts2017
Author(s)
Kobayashi, Y., Misumi, O., Odahara, M., Hirono, M., Hidaka, K., Endo, M., Sugiyama, H., Kuroiwa, T., Shikanai, T., Nishimura, Y.
Organizer
第58回日本植物生理学会年会
Place of Presentation
鹿児島大学、鹿児島
Year and Date
2017-03-16 – 2017-03-18
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