2016 Fiscal Year Research-status Report
対称二分裂におけるオルガネラ分配の質的非対称性の解明
Project/Area Number |
16K14770
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
八木沢 芙美 琉球大学, 研究基盤センター, 准教授 (70757658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オルガネラ / ミトコンドリア / ペルオキシソーム / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞は、固有の機能を担う細胞小器官、即ちオルガネラを含み、これらは細胞分裂時に母細胞から娘細胞へと分配される。動物の幹細胞や出芽酵母は、非対称に分裂し、寿命の異なる二つの娘細胞に分かれる。近年、興味深いことに、オルガネラが非均質に分配されることが娘細胞間の差に寄与することが分かってきた。しかしながら、対称分裂を行う生物でも、オルガネラの非均質な分配が見られることが示唆されており、細胞の寿命や分裂について新しい問題が提起されている。本研究は、対称分裂で増殖する単細胞紅藻 Cyanidioscyzon merolae(シゾン)をモデルに、真核生物の対称分裂におけるオルガネラ分配の質的非対称性を明らかにすることを目的としている。
<ミトコンドリアの非均質な分配について> ヒト幹細胞では、非均質な分配の前提となる質の異なるミトコンドリアがミトコンドリア分裂時に生じる可能性が示唆されており、この可能性を検証することにした。シゾンはほぼ全てのオルガネラを1つずつしか含まず、明暗周期によって細胞分裂とそれにともなうオルガネラ分裂を同調化できる。28年度は研究の基盤として、(i) ミトコンドリア分裂のダイナミクスをライブイメージングによって明らかにした。さらに、(ii) ミトコンドリアタンパク質の質の違いとして、新旧、すなわち合成されてからの時間を識別できるシステムを確立中である。
<ペルオキシソームの非均質な分配について> シゾンではペルオキシソームの酵素であるカタラーゼが非均等に分配されることがある。この過程をさらに解析するにあたり、(iii) カタラーゼのライブイメージング系を構築した。また、(iv) 細胞質分裂は短時間でおこり、オルガネラがどのように分配されたか解析しにくいという問題があったため、遺伝子操作により細胞質分裂をコントロールできるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28度はミトコンドリア、ペルオキシソームの分裂過程をライブイメージングで明らかにした。また、細胞質分裂を特定の段階で停止させる仕組みを構築することができた。今年度は、これらを利用してさらに研究を進めていくことができると考えている。一方、ミトコンドリアの質的に異なるタンパク質を検出するシステムについては、改良が必要である。28年度は質の違い(タンパク質から合成されてからの時間)を区別できるよう、相同組換えにより、SNAP-tagのついたミトコンドリアタンパク質を安定して発現する株を作成した他、GFP融合ミトコンドリアタンパク質をヒートショックプロモーター下で一過的に発現させる株を作成した。SNAP-tag 融合タンパク質を発現する細胞にSNAP-tag 用の蛍光試薬を添加すると、共有結合によってtag が蛍光ラベルされる。一過的にラベルすることによって、ラベルした時期に存在するタンパク質だけを標識することができる。作製したミトコンドリアタンパク質-SNAP-tag株では、蛍光標識をしたところ、ミトコンドリアを標識することは可能であったが、実験にはより高いラベリング効率が必要である。また、ヒートショックプロモーター下でGFP融合ミトコンドリアタンパク質を発現させる株は、一過的にヒートショックを与えることにより、誘導時に合成されたタンパク質だけをGFPで検出できる。観察に十分なGFPの輝度を得られるよう、現在改良を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、進捗状況に述べたよう、ミトコンドリアタンパク質の質的な違いを検出できる株について改良を行い、ミトコンドリアタンパク質がどのように分配されるか解析をすすめる。さらに、娘細胞間でミトコンドリアの質的な違いが検出された場合には、セルソーターを用いて、異なるミトコンドリアを持つ娘細胞の集団を分離し、それぞれの細胞の増殖速度や、熱、pH、重金属、活性酸素などのストレス下で培養し、増殖によって環境適応能の差を評価するなど、非均質なオルガネラ分配が細胞生理に与える影響を多角的に検証する。さらに、ペルオキシソームについても非均等分配の頻度やメカニズム、非均等分配が娘細胞にあたえる生理的違いについて同様の検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
必要な試薬を年度末に発注していたが、納品が間に合わなかったため残額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
納品が間に合わなかった試薬を再度発注し、購入する予定である。
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