2017 Fiscal Year Research-status Report
脊索動物ホヤの卵胞成長におけるカテプシンファミリー遺伝子非コードRNAの役割
Project/Area Number |
16K14772
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
酒井 翼 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 研究員 (40414122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | antisense RNA / カタユウレイボヤ / 初期卵胞 / カテプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
当グループは脊椎動物の姉妹群である脊索動物ホヤを用いて、未だ謎の多い動物の初期卵胞発育の分子メカニズム解明を目指している。これまでの解析で、神経ペプチドタキキニンによって誘導される酸性プロテアーゼの一種、カテプシンD(ctsd)の活性化がカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の初期卵胞(卵黄形成期卵胞)発育に関与することを見出し、In situ hybridizationによって卵巣中の初期卵胞でCi-ctsdとそのサブタイプ(Ci-ctsb, h, l)の共発現がmRNAだけではなく、antisense(as)RNAも細胞特異的に起こることが示唆された。 本年度は、これらasRNAを同定するため、ビオチン標識を施したCi-ctsb, d, h, l sense RNAをin vitro合成し、卵胞中total RNAからこれらと結合するRNAをアビジンビーズを用いてアフィニティー精製を行った。そして、精製RNAの HiSeqによるRNAseq解析から、Ci-ctsb, d, h, lのmRNAと相補的な配列を示す、それぞれのasRNAを同定した。 さらに、Ci-ctsb及びCi-ctsh mRNAの3‘非翻訳領域と相補的に重複する領域を有するRNA2種をホヤ卵胞からクローニングすると共に、それらの翻訳産物が初期卵胞で発現することを示唆する実験結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)In situ hybridizationによってカタユウレイボヤの初期卵胞においてカテプシン(CTS)ファミリー、Ci-ctsb, d, h, l遺伝子からの発現が示唆されたアンチセンス(as)RNAを同定するため、Ci-ctsb, d, h, l のそれぞれ約400bpからなる3領域のビオチン標識化sense RNA probeを作製し、Ciona初期卵胞からprobeと結合するasRNAをアビジンビーズにより精製した。そして、RNAのストランド方向を特定可能なイルミナ社のTruSeq Stranded RNA kitを用いたRNAseqでCi-ctsb, d, h, l mRNAのexonと相補的に一致するasRNAをそれぞれ同定した。そして、Ci-ctsb, d, h, l asRNAの1-1.5kbp長の配列をホヤ初期卵胞からクローニングし、配列解析を行った所、Ci-ctsb、d、h、lのeoxnと対応するasRNAの他に、mRNAの複数のイントロンを保持したasRNAも見出すことが出来た。 (2)これまでの解析の過程で、Ci-ctsb及びCi-ctshの3’非翻訳領域に相補的に重複を有する2つのRNAを見出し、ホヤ卵胞からクローニングした所、これらの塩基配列にそれぞれVacuolar-type H+-ATPase Subunit Voeに相同性を示す78アミノ酸残基のペプチド、そして機能未知の51アミノ酸残基のペプチドをコードすることが予測された。そこで、これらの翻訳が予測されるアミノ酸配列の中から20残基を特異的に認識する抗血清の作製を行い、これらの特異的抗体を用いた免疫染色で翻訳産物が卵黄形成期卵胞で発現することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)現在、ノンコーディングRNAはターゲットRNAと結合して翻訳制御を行う他、タンパク質と複合体を形成して、生理機能を調節すると考えられている。そこでCi-ctsファミリーasRNAの初期卵胞成長における役割を明らかにするため、複合体を形成するタンパク質の同定を行う。Ci-ctsb, d, h, l asRNAの、それぞれ1.0-1.5kbp長の配列をホヤ卵胞からクローニングした発現ベクターを作製し、プルダウン実験用に5-bromo-UTP (BrU)標識asRNAプローブを合成する。そして、BrU標識asRNAプローブと結合する卵胞中のタンパク質画分をプルダウン法で精製し、続いて、ゲル電気泳動で分離する。ゲル電気泳動でasRNA区のみに現れるゲルバンドを分取し、MS/MS分析でアミノ酸配列を解析し分子を同定する。同定される結合物の中から酵素や転写因子等の既知の機能性タンパク質を選択し、Ci-ctsb, d, h, l asRNAのタンパク質機能制御を検証する。
(2)Ci-ctsb及びhのmRNA 3'非翻訳領域と重なりを有するRNAがそれぞれコードするCi-v-ATPASE SUBUNIT VoeとCi-CHURPの卵胞成長との関連が示される結果が得られたので、これらの特異的抗体を用いたアフィニティーカラムを作製し、ホヤ卵巣もしくは卵胞抽出液から結合物を精製する。対象とするのは50-80アミノ酸残基のペプチドであるため、ゲル精製は困難なこととが予想されるため精製物はHPLCで分取後、MS/MS解析でアミノ酸配列を解析し、Ci-ctsb 及びCi-ctsh asRNA由来ペプチドの卵巣における存在を検証する。卵巣におけるペプチドの発現が確実となれば、これらの特異的抗体を卵巣もしくは卵胞in vitro培養系に投与して卵胞成長への影響を解析する。
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Causes of Carryover |
年度末の時点の使用額計算で140円の残りが生じ、本課題研究の遂行において140円で購入出来る試薬及び科学器機が無かったため。
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Research Products
(3 results)