2016 Fiscal Year Research-status Report
超解像ライブイメージングによるRNA動態解析法の開発
Project/Area Number |
16K14773
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
増井 修 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (30579305)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超解像顕微鏡 / ライブイメージング / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Xist ncRNA は哺乳類における不活性X染色体の形成に必須のクロマチン制御性 ncRNA であるが、その物性や作動メカニズムはよく分かっていない。これらを明らかにするために、我々は既存の MS2 アプタマーシステムや独自に開発した Bgl アプタマーシステムを用いて Xist ncRNA をGFPなどの蛍光タンパク質シグナルとして可視化できるマウス細胞を作製した。この細胞を超解像顕微鏡を用いてタイムラプス撮影し、得られたデータを解析して以下の項目を明らかにすることを目標とする。 (1) Xist RNA の形成する構造体の形状、物性を明らかにする。 (2) Xist ncRNA 分子とそのエフェクター分子の相互作用、相関関係を明らかにする。 超解像顕微鏡は理化学研究所に設置されているニコン社の構造化照明顕微鏡(SIM)並びに理化学研究所和光キャンパスの中野明彦博士らが独自に開発した SCLIM 顕微鏡を使用する。解析に使用するソフトウェアは共同研究者であるキュリー研究所(フランス)の Eldad Keptan 博士が開発した物を用いる。 平成28年度は主に超解像顕微鏡を用いたデータ取得の条件を決定し、その条件を用いてデータの取得を開始した。さらにそれらの撮影データの解析に適したソフトウェアの開発を行った。これまでに行った実験と解析はおおむね予定通りに進行しているが、タイムラプス撮影の後半部分において mCherry シグナルがブリーチングして解析を難しくするという問題が生じており、これに対処するために、当初計画にはなかった新しい解析アルゴリズム SRRF の導入を試みることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3D(XYZ 方向)でのタイムラプス撮影で得た画像データからvoxel単位での蛍光強度を指標にして解析を行うことを目指しており、その場合にはZ軸方向に15枚程度、フレーム間隔は数秒程度以下の撮影条件を必要とする。ニコン社のSIMでは一つのZ平面を撮影するのに1秒弱を要することから上記の条件を満たすことができず、 Z 平面だけを用いて2秒間隔でのタイムラプス撮影を行い解析に用いることとした。一方、SCLIMは上記の条件を満たし、取得した3Dでのタイムラプス撮影画像を解析に用いることとした。SIMの場合は40/40 nm(X/Y)/pixel、SCLIM は60/60/100 nm(X/Y/Z)/voxel の空間分解能となる。 Xist ncRNAをGFPとして可視化できる細胞に、Xist ncRNAとの直接結合が報告されているhnRNP-Uタンパク質を赤色蛍光タンパク質であるmCherryと融合させて発現させた細胞を撮影に用いた。もしXist-GFPと hnRNP-Uタンパク質が直接結合する場合にはGFPとmCherryの二つのシグナルはpixel/voxel単位で高い相関関係を示すと考えられる。この細胞を撮影したタイムラプスデータを解析した結果、GFPとmCherryのシグナルはどちらの顕微鏡を用いた場合にも高い相関関係を保ったまま時間軸を推移し、また各分子の移動ベクトルを算出したところ、両者の移動ベクトルはほぼ同じ方向を示すことが明らかになった。このことはXist ncRNAとhnRNP-U両分子が直接結合して細胞核内で移動していることを示唆している。問題点としてはどちらの超解像顕微鏡を使用した場合にも蛍光シグナル、特にmCherryシグナルにおいて強いブリーチングが観察され、このことからタイムラプス後半での解析では十分な蛍光シグナルが得られておらず、改善する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
設定した目標を達成するために、平成29年度は以下の項目を実施する。 (1) 昨年までに実施した解析対象のサンプル数を増やすための撮影を進める。 (2) Xist-GFPを発現する細胞に free-mCherry を発現させた細胞を作製して、negative control としてデータ取得を行う。 (3) Xist-GFP 発現細胞を固定して、Xist ncRNA に対する RNA FISH を行い、RNA シグナル(red)と GFP シグナルの相関関係を比較して positive control として解析に使用する。 (4) 「現在までの進捗状況」の欄で前述したブリーチングの問題を解決するために、最近報告されたSRRF (super-resolution radial fluctuations) (Nat Commun. 2016) を用いた解析を試みる。SRRF を用いることで励起光の照射量を1/10以下にすることが可能となり、また一般的な蛍光顕微鏡を用いて取得した画像を超解像顕微鏡で取得した画像並みの空間分解能(XY: 100 nm 程度)へと変換することも可能となる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] PCGF6-PRC1 suppresses premature differentiation of mouse embryonic stem cells by regulating germ cell-related genes2017
Author(s)
Endoh M, Endo TA, Shinga J, Hayashi K, Farcas A, Ma KW, Ito S, Sharif J, Endoh T, Onaga N, Nakayama M, Ishikura T, Masui O, Kessler BM, Suda T, Ohara O, Okuda A, Klose R, Koseki H
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Journal Title
ELife
Volume: 6
Pages: e21064
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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