2018 Fiscal Year Research-status Report
インターネットによる地球規模の自然環境要因と動物行動のリアルタイム測定と解析
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16K14776
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松野 浩嗣 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (10181744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明石 真 山口大学, 時間学研究所, 教授 (30398119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 動物行動 / インターネット / 画像処理 / ミナミコメツキガニ / 潮汐リズム / 概日リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上の多くの生物は、日光の周期に同調した約24時間のリズム(概日リズム)を持つことが確かめられている。また、海洋にいる生物は潮汐サイクルに適応した概潮汐リズムを持つとされ、このリズムへの適応は、海岸で生息する動物にとって必要不可欠なものであると考えられる。 本研究の目的は、対象動物を複数の環境因子が変化する場所に設置して実験を行う装置の開発である。今年度は、潮汐に合せた行動が確認されているミナミコメツキガニについて、自然環境下で観察する装置、すなわち温度、湿度、気圧、照度などの環境変化のデータを屋外で計測できる装置を開発した。さらに、概潮汐リズムは潮汐サイクルも同調因子となる可能性があるため、干潮、満潮時間にあわせて、飼育している水槽の水位を変える装置を開発した。この装置を用いた水槽と用いない水槽の2つを用意して、ミナミコメツキガニの行動を観察した。また、背景差分法とAND演算によって、ミナミコメツキガニの行動を自動的に検出するための画像処理手法も開発し、目視データとの比較によりその有効性を検証した。 これにより、インターネットによる接続環境があれば、地点によらずデータを取得することができる。実際に山口大学と琉球大学にこの装置を設置して、1分間隔でこれら温度、湿度、気圧、照度といった環境データとカニの匹数を取得して、行動解析を行い、ミナミコメツキガニの行動が潮汐の影響を受けること、及び概日時計を持つ可能性があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はマウスなどの哺乳類のみについて研究を行う予定であったが、概日リズムとは別の概潮汐リズムをもつミナミコメツキガニについても実験装置の開発と行動データ取得をおこなった。その結果、ミナミコメツキガニの概潮汐リズムは、潮の満ち引きの影響を受けることに合わせて、まだ明らかにされていない、概日リズムをもつことの可能性についても示すことができた。 また、山口大学と琉球大学の2地点に実際に装置を設置し、同時にデータを取得して、動物行動の比較を行うことのできるシステムをほぼ完成することができた。画像処理については、光の加減によるカニの検出への影響の処理に不十分な点があり、課題として残された。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
温度、湿度、気圧、照度の環境要因を動物の行動と同時に計測する装置は完成したが、動物の行動を自動計測するための画像処置については、まだ改善の余地がある。今後はこの問題の解決に取り組む。 この装置の開発により、温度、湿度、照度、気圧といった環境データとカニの行動引数のデータを自動的に大量に取得できるようになったので、今後は、このデータに対して機械学習の手法を適用して、新しい知見を見出すなど、これまでの生物リズムの研究とは違うデータサイエンス的な研究を実施することがテーマとして挙げられる。 また、鳥類や魚類の行動計測などにも本研究の手法が適用できるような装置の開発も今後の研究課題として挙げられる。
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Causes of Carryover |
環境要因の記録と、潮汐リズムの発生を行う装置は完成したが、動物の行動を記録する画像処理については計測が不正確であり、改良の余地がある。そこで、令和元年度はディープラーニングなどの機械学習の技術を適用して、高精度で動物の行動を検出するシステムを作成する。平成30年度中にこの方針を決め、画像処理の研究を中止したため、そのデータ整理を行うための謝金と、研究発表を行うための旅費の執行を行わなかったことが次年度使用額が生じた理由である。
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