2017 Fiscal Year Research-status Report
松果体ホルモン・メラトニンの挙動を制御する分子機序
Project/Area Number |
16K14780
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
笠原 和起 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 副チームリーダー (50344031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メラトニン / N-アセチルセロトニン / 松果体 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
メラトニンは松果体において、セロトニン→N-アセチルセロトニン(NAS)→メラトニンという2段階の酵素反応によって夜間のみに合成されるホルモンである。しかし、実験用マウスのほとんどの系統ではメラトニンを合成することができなくなってしまった。このようなマウスを用いて、サーカディアンリズムや生殖腺、寿命などの研究が行われてきた。我々は、実験用マウス系統のゲノム上の遺伝子変異を見出し、メラトニンを合成できる野生マウス由来系統(MSM/Ms)と交配させてメラトニンを合成できる実験用マウス系統(C57BL/6)コンジェニックマウスを作製した。しかし、松果体で合成できるのに、血中濃度がMSM/Msほど高くならないことに気が付いた。血中濃度が低い分子基盤を明らかにするために、C57BL/6とMSM/Msを交配させたF2あるいはN2マウスのゲノム解析を行うことにした。前年度までに、松果体中・血漿中のメラトニンおよびNASの濃度を精密にかつ同時に測定するために液体クロマトグラフィー質量分析器(LC/MS/MS)による定量法を確立した。 本年度は、野生由来系統MSM/Ms(メラトニンを生合成できる系統)と一般的な実験用マウス系統C57BL/6(メラトニンを生合成できない系統)とを掛け合わせたF2マウス、および実験用マウス系統C3H(メラトニンを生合成できる系統)とC57BL/6とを掛け合わせたF2マウスを得た。また、LC/MS/MSを用いた定量法のさらなる条件検討を行い、検出感度および定量感度を高めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属する研究センターの共同利用機器であるLC/MS/MSを用いてメラトニンおよびその前駆体であるN-アセチルセロトニン(NAS)の同時定量を行っているが、LC/MS/MS装置の利用者が多く、条件検討を行うための利用予約が取れなかった。本研究では、メラトニンあるいはNASの生合成量・分泌量が低下する個体を測定することになるため、より高感度の定量が重要になるため、条件検討が必須であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究によって、当初の研究計画を遂行するための準備がすべて整った。MSM/MsとC57BL/6と掛け合わせたF2およびN2マウスも得て、LC/MS/MSによるメラトニン・NASの同時定量を行う。その結果をもとに、ゲノム解析を行う。研究計画では連鎖解析を行う予定であったが、マウスのexome解析も安価になったので、exome解析が可能かどうか考慮する。今年度、研究代表者は、別の研究プロジェクトにおいてマウスのexome解析を行い、その解析等に習熟した。
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Causes of Carryover |
野生マウス由来系統MSM/Msはオス個体とメス個体の選り好みのために交配が難しいケースがあり、維持していたMSM/Ms系統を維持できなくなってしまったことがあり、解析に供するためのマウスを増やすのが遅くなってしまった(飼育数が予定よりも少なくなってしまった)ため。また、LC/MS/MS装置の利用予約が混雑していて、思うように条件検討等ができなかった(解析数が少なくなってしまった)ため。 遅れが生じてしまったが、当初の計画通り、交雑マウスの飼育のための費用と、松果体および血中のメラトニンとその前駆体であるN-アセチルセロトニンの測定のための費用に、次年度使用額を用いる予定である。
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