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2016 Fiscal Year Research-status Report

発達期の脳の細胞種特異的クロマチン動態から解明する神経回路可塑性のメカニズム

Research Project

Project/Area Number 16K14781
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

酒井 晶子  新潟大学, 医歯学総合研究科, 科学技術振興研究員 (70532745)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2018-03-31
Keywords臨界期 / 抑制性ニューロン / パルブアルブミン / ChIP-seq / トランスクリプトーム / 精神疾患 / Otx2 / ミトコンドリア
Outline of Annual Research Achievements

幼年期のほ乳類の脳には、環境から受けた刺激や経験に応じて神経回路が活発に再構築される(可塑性が高まる)時期がある。これは「臨界期」と呼ばれ、生涯の中で生後の一時期にしか現れない。自閉症のモデルマウスでは臨界期の異常が示唆されているように、臨界期に神経回路網が可塑性を持つことは脳の機能発達に重要である。臨界期は抑制性ニューロン(特にパルブアルブミン陽性PV細胞)が経験により成熟することで始まる。本研究では臨界期の制御機構を抑制性ニューロン特異的なクロマチン動態変化から理解することを目的とする。本年度はマウス大脳皮質において臨界期のPV細胞発達に必須な転写因子であるホメオタンパク質Otx2の下流のターゲットを探索した。
まずChIP-seq法により臨界期皮質ゲノム上のOtx2の結合部位を網羅的に同定したところ、Otx2結合遺伝子群は、臨界期のみならず、統合失調症やアルツハイマー等ヒト疾患に関わる因子を多数含んでいた。更に、フローサイトメトリーを用いた抑制性ニューロン特異的なトランスクリプトーム解析(RNA-seq)により、Otx2の直接のターゲット候補として、転写制御因子、シグナル伝達因子、およびミトコンドリア因子が同定された。また、胎生期脳における報告との比較から、臨界期特異的なOtx2結合遺伝子として、PV細胞に特徴的な高頻度発火を司る因子(Kv3.1イオントランスポーター等)が明らかになった。一方で、酸化ストレス耐性に必須な遺伝子がOtx2に強く依存することから、Otx2の重要な役割としてPV細胞の高頻度発火に伴う酸化ストレスへの対応が考えられた。近年、PV細胞の酸化ストレスによる機能不全と精神疾患の関連が指摘されており、本研究の結果はOtx2がPV細胞の発達とホメオスタシス制御を通じて臨界期の回路可塑性、および神経・精神疾患に関与することを示唆する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究では細胞種特異的なクロマチン解析のために、生後のマウス大脳皮質から抑制性ニューロンをフローサイトメトリーにより分取することが必須である。当初はヒストン修飾のChIP解析のために脳神経細胞を生きたまま分取することを試みていたが、培養液に分取後の濃縮操作(遠心分離)により細胞に負荷を与え、細胞死を引き起こして期待通りの細胞数を得られないことから、細胞を分散させた時点でホルマリンによる架橋を行う方法に変更した。この試行錯誤により当初の計画よりも進捗が遅れた。しかしながら、現在までに抑制性ニューロンに特異的な遺伝子(Gad1)のエンハンサー領域において、活性なエンハンサーのマークであるアセチル化ヒストンH3K27のChIPにより細胞種特異的な濃縮を検出しており、今後この系を用いて網羅的解析に進めると考えている。

Strategy for Future Research Activity

上記で確立した系を用いて、臨界期前後の野生型正常マウスの大脳皮質から、アセチル化ヒストンH3K27(活性なエンハンサーマーク)、および、染色体高次構造を司り転写制御に関わる「コヒーシン」のChIP-seq解析を行う。ChIP-seqで得られた発達時期ごとのコヒーシンの全ゲノム結合位置、および既知のマウス組織・細胞での位置を比較することにより、臨界期の抑制性ニューロン特異的なコヒーシン結合部位を明らかにする。同定したエンハンサーや既知の転写因子の結合配列と比較解析を行うことで、臨界期の抑制性ニューロン発達に関わる新規の制御領域および制御因子の発見に繋がると期待される。更に、トランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行い、エンハンサー・コヒーシン結合部位と近傍遺伝子の発現の相関を解析することにより、発達時期・細胞特異的な遺伝子発現に関わる領域を明らかにする。

Causes of Carryover

実験手法の見直しの必要が生じたことにより当初の計画よりも進捗が遅れたため、物品費として主に計上していた次世代シークエンサー使用に掛かる金額を、次年度使用額として繰り越す。

Expenditure Plan for Carryover Budget

ChIP-seqによる網羅的解析のため、主に実験および次世代シーケンサー使用のための物品費として使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 臨界期の機構 ― こどもの脳の柔軟性を紐解く2017

    • Author(s)
      酒井 晶子、杉山 清佳
    • Journal Title

      生体の科学

      Volume: 68 Pages: 54~58

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.11477/mf.2425200575

  • [Presentation] Genome-wide targets of Otx2 homeoprotein in postnatal cortical interneuron are implicated in mitochondria and neurodevelopmental disorders /発達期の抑制性介在ニューロンにおけるOtx2下流因子群はミトコンドリア機能と精神疾患に関わる2017

    • Author(s)
      酒井 晶子、中戸 隆一郎、凌 一葦、侯 旭濱、原 範和、飯島 友也、柳川 右千夫、桑野 良三、奥田 修二郎、白髭 克彦 、杉山 清佳
    • Organizer
      第10回神経発生討論会
    • Place of Presentation
      秋保リゾートホテルクレセント(宮城県仙台市)
    • Year and Date
      2017-03-10 – 2017-03-11

URL: 

Published: 2018-01-16  

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