• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2016 Fiscal Year Research-status Report

一次細胞内共生系を成立させるエピトランスクリプトームの解明

Research Project

Project/Area Number 16K14788
Research InstitutionKyoto Prefectural University

Principal Investigator

松尾 充啓  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (70415298)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 小保方 潤一  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50185667)
Project Period (FY) 2016-04-01 – 2018-03-31
Keywords一次細胞内共生進化 / 有殻アメーバ / 葉緑体 / シアネレ / エピトランスクリプトーム / RNA修飾
Outline of Annual Research Achievements

ミトコンドリアや葉緑体を生み出した一次共生進化の初期過程で、宿主ゲノムと共生者ゲノムの機能的統合はどのように進むのだろうか。比較的最近シアノバクテリアを取り込んで真核光合成生物となった有殻アメーバにおいて、RNA修飾酵素遺伝子がシアノバクテリアからアメーバへと水平伝播していることを申請者はゲノム解析により見出した。本研究では、RNA修飾・エピトランスクリプトームがゲノムの機能的統合で果たす役割を、有殻アメーバのRNAシュードウリジン化酵素遺伝子の転移・再編成をモデルとして解明することを目的としている。平成28 年度においては有殻アメーバのシュードウリジン合成酵素遺伝子のシアノバクテリアへの形質導入と光合成オルガネラ(シアネレ)のトランスクリプトーム解析を予定していた。前者については、有殻アメーバのゲノム、トランスクリプトームの配列情報が断片化・欠落していたことが、本研究を遂行する上で新たな強い障害となったため、まずPacbioシーケンサーを用いた完全長cDNA解析を行い、本生物のゲノム・トランスクリプトーム情報の整備を行った。次いで得られた高精度アノテーション情報をもとにクローニングを試みたが難航し、目的遺伝子が大腸菌の増殖を抑制する難クローニング性遺伝子であることが示唆された。一方、シアネレトランスクリプトーム解析については、対象生物が増殖不調になったため、シアネレ単離の条件検討に留まり、主たるRNAseq解析は次年度へと持ち越した。本年度の研究により有殻アメーバの高精度ゲノムアノテーションを得ることができた。その解析から、シアノバクテリアとの共生が始まるタイミングでウイルスがアメーバに感染しはじめた痕跡が見つかり、「ウイルスと細胞内共生進化の関係」が世界で初めて明らかになった。この発見については植物生理学会関連集会オルガネラワークショップにて発表された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

有殻アメーバRNAシュードウリジン合成酵素の機能・特性を明らかにするため、平成28年度においては、同酵素遺伝子のシアノバクテリアへの形質転換を予定していたが、予想外にもこの遺伝子のクローニングが難航した。シュードウリジン合成酵素は、原核生物においてrRNA等の機能性RNAに作用して立体構造を変化させることから、機能性RNAの機能障害が有殻アメーバ遺伝子の形質導入により大腸菌内で引き起こされて、大腸菌の増殖が著しく阻害されたのではないかと推測される。これは申請者が提唱する「核に転移したRNA修飾酵素遺伝子が原核型共生者の増殖を制御する」という仮説とよく合致する。計画時に想定していた形ではないものの、本遺伝子の特性について、情報が皆無の状態から進展してその性質の一旦を明らかにできた点は大きいと申請者は考える。また本解析を進めるにあたり、有殻アメーバのゲノムアノテーションを一般的な分子生物学実験に使用できる水準まで整備した。そしてその解析から、ウイルス感染が細胞内共生進化に関わることを示唆するデータを得る等、新発見がもたらされた。本研究で得た有殻アメーバの高精度ゲノムアノテーションは当該分野において今後も発見をもたらす貴重な研究リソースになると考えられる。また本課題においては有殻アメーバの増殖が不安定である点が研究の律速になっていたが、この問題においても、ウイルスの関与がゲノムアノテーションの解析から示唆され、今後の培養の改善を図ることが可能になった。
初年度においては、アメーバの増殖不調により予定していたシアネレトランスクリプトーム解析を行えなかったのの、シュードウリジン合成酵素遺伝子の特性について知見を得た他、情報インフラ整備により、当初においては予想もしなかった新発見、今後の研究改善に繋がる情報を得たことを鑑みて、申請者は研究の進捗は概ね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度においては、当初の予定どおりに有殻アメーバとシアノバクテリアのSynechococcus類、Prochrorococcus類のPseudo-seq解析を優先して行う。また28年度に行えなかった有殻アメーバシアネレのトランスクリプトーム解析も実施する。その際、計画していた生化学的手法によるシアネレ単離は、ゲノム解読を行った有殻アメーバ株では難しいことがこれまでの解析から判明したため、単離を行わず全RNAのトランスクリプトーム解析を行った後、バイオインフォマティクス手法により、シアネレトランスクリプトを抽出して解析する。有殻アメーバのシュードウリジン合成酵素遺伝子のシアノバクテリアへの形質転換については、分子の特性から困難と考えられるものの、研究上重要であるので、29年度においても引き続き試みる。以上の解析から得られた結果をまとめて、論文発表を行う。

Causes of Carryover

28年度に想定していた有殻アメーバのシアネレのトランスクリプトーム解析実験が、同アメーバの増殖不調のために行えなかった。その費用が次年度の使用額として繰り越された。

Expenditure Plan for Carryover Budget

28年度に行えなかった有殻アメーバのシアネレトランスクリプトームのRNAseq解析実験を、平成29年度実施予定のPseudo-seq解析に加えて行う。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017 2016

All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] 真核光合成生物はどのように生まれたか?―光合成有殻アメーバのゲノム解析から見えてきた一次細胞内共生進化の初期プロセス2017

    • Author(s)
      松尾充啓、潟端篤、水口洋平、野口英樹、豊田敦、藤山秋佐夫、鈴木穣、佐藤壮一郎、中山卓郎、神川龍馬、野村真未、稲垣祐司、石田健一郎、小保方潤一
    • Organizer
      第19回植物オルガネラワークショップ
    • Place of Presentation
      鹿児島大学、鹿児島
    • Year and Date
      2017-03-15
  • [Presentation] Evolutionary roles of SL-trans-splicing in the primary endosymbiosis2016

    • Author(s)
      Mitsuhiro Matsuo, Atsushi Katahata, Soichirou Satoh, Motomichi Matsuzaki, Mami Nomura, Ken-ichiro Ishida, Yuji Inagaki and Junichi Obokata
    • Organizer
      The 13th International Society of Endocytobiology and Symbiosis
    • Place of Presentation
      Kyoto prefectural Univ. Kyoto, Japan
    • Year and Date
      2016-09-10 – 2016-09-14
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2018-01-16  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi