2016 Fiscal Year Research-status Report
原始RNAポリメラーゼの探求のための試験管内進化実験
Project/Area Number |
16K14793
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田上 俊輔 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (40586939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子進化 / 構造生物学 / RNAポリメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,Last universal common ancestor (LUCA)以前の生命進化の経路を明らかにするために,LUCA以前から重要な役割を果たしてきたであろうRNAポリメラーゼを対象にした分子進化実験を行っている. 現存生物のRNAポリメラーゼは分子量約30万にもなる巨大なタンパク質複合体であるが,原始生命においてはRNAポリメラーゼもより単純なタンパク質として誕生したと考えられる.そこで本研究では,まず現存生物のRNAポリメラーゼから本質的な活性に不要なドメインを切り詰めて原始RNAポリメラーゼを再構築することを試みた.しかし,このような巨大なマルチサブユニットの酵素をエンジニアすることは遺伝子操作やタンパク質発現の面で大きな困難を伴った. そこで,本年度の途中で方針を変更し,まずは現存のRNAポリメラーゼの活性中心ドメイン(約100アミノ酸)のみを切り出した原始タンパク質を再現することにした.RNAポリメラーゼのような巨大なタンパク質では,活性中心ドメインは他のドメインに取り囲まれている.その為,活性中心ドメインのみを切り出してくると,周りのドメインとの相互作用に使われている疎水性残基が表面に露出してしまうことになる.このような表面の疎水性残基はタンパク質が凝集し不活性化する原因にあると考えれるが,実際に活性中心ドメインのみ切り出してきたタンパク質の可溶化率は非常に低かった.しかし,我々は祖先配列予測や保存配列に基づく人工的なタンパク質配列のデザイン,さらに立体構造情報に基づく変異導入を駆使することによって,可溶性の高い活性中心ドメインを再現することに成功した. 今後この活性中心ドメインに付属のドメインを徐々に付け加えていくことで,RNAポリメラーゼの構造と機能の歴史を再現できると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で示したとおり,本研究では実験方針を本年度内に変更しており,その為実験計画に多少の遅れが出ている.しかし,当初予定していた方法とは異なった方法で原始RNAポリメラーゼの再現ができる可能性が示されたため,研究自体は飛躍的な発展を遂げつつあると言える. RNAポリメラーゼは巨大なマルチサブユニットのタンパク質複合体である.原始RNAポリメラーゼの構造を再現するために,この巨大なタンパク質からドメインをひとつひとつ除いていく実験計画をスタートさせたが,この実験は現状様々な困難に直面している.そこで,むしろRNAポリメラーゼの活性中心ドメインを単体のタンパク質として再現し,その中心ドメインに付随的なドメインを加えていくことでRNAポリメラーゼの進化の過程の再現を試みることにした.この方針で現在までに活性中心ドメインを含む複数のドメインの可溶化に成功しており,今後は複数のドメインをつなぎ合わせることで,RNAポリメラーゼの進化の中間体を再現していくことを試みる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は再現した祖先系活性中心ドメインの周りに徐々に補助的なドメインを加えていくことで,RNAポリメラーゼの構造と機能の相関を明らかにしつつ,その進化の過程を再現する.とくに,完全なRNAポリメラーゼとして完成する前の中間的な酵素が一体どのような活性を持ちうるのかは重要な問題点であり,再構成した進化の中間体の細かな生化学的解析が必要となる.ただし,RNAポリメラーゼの複数のドメインをつなげていく過程で,ドメインのつなぎ方が不適切だと本来の活性が再現できない可能性もある.そのような可能性を考慮するのであれば,何らかの方法でドメイン間のリンカーの長さ・配列を調節する必要がある.本研究では申請者が過去に構築したRNAポリメラーゼの試験管内進化法(Tagami S, et al., 2017, Nature chemistry)やmRNA display法を用いて,可溶性を保持したまま複数ドメインをつなぎ合わせRNAポリメラーゼの進化の中間体を再現する予定である.
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Causes of Carryover |
本研究では,原始RNAポリメラーゼの再構成を目指しているが,マルチサブユニットのRNAポリメラーゼの扱いが想定していた以上に困難であり,研究計画に遅延が発生した.しかしながら,新たな手法を用いることで困難を克服しつつあり,次年度において研究の大きな進歩が期待される.この方法では祖先タンパク質配列予測や保存されたアミノ酸配列を利用して,新たなタンパク質の配列をデザイン・再構成するため,実験は人工遺伝子合成に依存している.そのため次年度に複数の人工遺伝子合成を行う必要があり,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな手法にを用いてデザインした祖先型RNAポリメラーゼの配列を再現するために合成DNAを購入する.また,再構成したRNAポリメラーゼの進化の中間体について,どのような活性を持ちうるのか解析を行うために,蛍光修飾をほどこしたRNA等を購入する必要がある.さらに,2017年度に当該分野での重要な国際会議があり参加が必須であると考えている.
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