2016 Fiscal Year Research-status Report
進化から紐解く骨の謎: 魚類における骨細胞の獲得・喪失パタンと適応的意義
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16K14794
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小泉 逸郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50572799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨細胞 / 骨の進化 / 平行進化 / 魚類 / 系統比較 / 淡水・海水適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、骨細胞の獲得過程とその機能を明らかにすることである。四肢動物の生存に不可欠な骨細胞であるが、驚くことに多くの魚類は骨細胞を持っていない。魚類における骨細胞の獲得・喪失プロセスを探ることで、免疫や代謝にまでおよぶ骨細胞の新しい機能や役割が明らかになると期待できる。本研究では、魚類の骨細胞を網羅的に調べることで、骨細胞の進化史を明らかにする。特に、淡水/海水への進出および異なる重力(圧力)環境への適応が骨細胞の獲得・喪失を引き起こしたと仮説を立て、大規模な系統種間比較分析を行い、さらに、ここで得られた獲得・喪失パタンを飼育実験により検証する。
平成28年度は骨細胞の保有パタンの網羅的な解析および飼育実験を行った。500種を超える魚類の骨細胞の保有パタンを文献および組織切片により収集・整理した。系統種間比較分析(PCM)による予備的な解析から、淡水および海水適応が骨細胞の有無に関係している可能性が示唆された。ただし、同じ魚種でも骨の部位によって骨細胞の有無が異なるため、解析においては課題も見つかった。また、飼育実験はサクラマス、イトヨ、ウグイなど系統の異なる複数種で淡水および海水での飼育に成功した。一方、異なる重力における骨細胞発達を確かめる実験においては、半地上での飼育がまだ成功していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膨大なデータが集積できた一方で、骨細胞の計測部位の統一などの問題が浮上してきた。また半地上での飼育実験系が確立できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
系統種間比較分析(PCM)では500魚種すべてを用いるのではなく、同様の方法(骨部位)で計測され、かつデータの豊富な分類群に絞って解析を進めることを検討する。また、半地上での飼育実験に関しては、必要に応じて飼育方法を確立している海外の研究室を訪問する。その他は計画にしたがって遂行する。
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Causes of Carryover |
組織切片を作るためのミクロトーム等を購入する予定であったが、当該年度は他研究室のものを借用した。また、組織切片作成やDNA解析のための人件費を計上していたが、当該年度は文献収集や飼育実験系の確立などに重点を置いたため、人件費を使わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析すべき種や分類群を絞り込めてきたので、組織切片の解析を増やす。このためミクロトームを購入し、作業のための人員も雇う。
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