2016 Fiscal Year Research-status Report
細菌から探る, コミュニケーションの地理的な系統と推移
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16K14795
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
豊福 雅典 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30644827)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細菌間情報伝達 / 環境適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの細菌で低分子化合物を言葉の代わりに用いて,お互いに情報交換して遺伝子発現を調節し,集団行動を統制していることが知られている。しかしながら,異なる環境中に生息する細菌が同じ言語能力を持つのかどうか分かっていない。同種においても,それぞれの環境に適した情報交換能力を独自に発達させ,調節される遺伝子群も変化している可能性がある。本研究では異なる水環境中から単離された緑膿菌を用いて,その言語能力(シグナル物質産生・認識・応答性)の違いを明らかにし,系統地理学的解析により,同種内でコミュニケーションがどのように変化して環境への適応に貢献しているのか解析する。 本年度は,河川から外洋まで広範囲に渡って単離された緑膿菌23株について,そのシグナル物質生産性及び応答性について解析した。シグナル物質生産性はシグナル物質の定量やシグナル物質に応答する指示菌体を作製することで解析した。また,シグナル応答性は外部からシグナル物質を添加して,シグナル物質制御下の表現型を観察することで評価した。その結果,緑膿菌は単離された環境によって,シグナル物質生産性及び応答性が異なっていることが明らかとなった。これらの違いは,株が単離された環境,つまりは生息環境と相関があり,外洋ほど,シグナル生産性が低下する傾向が観察された。以上の結果から,同種においても環境に応じて情報交換能力に違いが表れることが示された。今後はシグナル物質生産や応答に関する遺伝子の配列情報を中心に解析することで,情報交換能力の違いが何に起因するかについて,その遺伝的な背景を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通り,得られた環境単離株についてそのシグナル生産性および応答性を解析した。その成果により,環境によって,シグナル生産性および応答性が変化していることが明らかになり,細菌の情報交換能力の系統地理学的な解析を今後進めていく上で興味深い結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は緑膿菌の情報交換能力がどのようにして変化したのかを解明するために,遺伝子配列情報を明らかしてその遺伝的な背景を解析していく。特に情報交換能力に関わることが報告されている遺伝子を中心に解析し,株間で比較する。さらにその違いがどのような機構によって生じるのかについて配列情報をもとに仮説を立てて検証していく。
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Research Products
(11 results)