2016 Fiscal Year Research-status Report
衛星追跡で解明する生得的なさえずりを持つ鳥類アカショウビンの生態的種分化
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16K14796
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 昌興 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70311917)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アカショウビン / 非鳴禽類 / 音響環境 / 局所適応 / 島嶼 / 亜種 / 帰還 / 移動分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥類には、地理的障壁による物理的な隔離だけで種分化したとは考えられないほど多くの近縁種や亜種の分布域が隣接することが知られている。これらのあるものは側所的種分化によるものと推察されるものがある。このような例は局所適応が移動分散を制限した結果と推察されるが、局所適応の様相が実証された例はない。本研究は、南西諸島のアカショウビンのさえずりの音響特性が環境騒音に対する局所適応であり、その局所適応が移動分散を制限することを実証することを目的とする。本研究は、局所適応が移動能力に長けた鳥の移動分散を制限することを示す初めての研究であり、生態的種分化の一例を提供するものである。 本研究で、最も重要であり独創的である点はアカショウビンを材料にすることである。アカショウビンのさえずりは、学習によって獲得されず、生得的である。これまでの鳥類の音響研究は主にさえずりを後天的に獲得する鳴禽類が研究対象にされた。後天的なさえずりの獲得は分散を制限しない。つまり、これまでの研究は音響特性の局所適応が移動分散を制約しない鳴禽類を対象としたため、本研究のようなアイディアは生まれ得なかった。 多良間島、宮古島、久米島、沖縄島、伊平屋島、奄美大島でアカショウビンの鳴き声を録音し、声紋解析をした結果、鳴き声の特徴には緯度に沿った勾配があった。これは島ごとに植生や他の生物の音などの違うことが音響環境に反映され、鳴き声の特徴が形成されたものと推察された。宮古島における音声再生実験により、鳴き声の違いは個体群毎に認識され、同じ特徴のさえずりにのみ強く反応することがわかった。鳴き声への反応の違いは、同類交配による生殖前隔離の存在を示唆する。鳴き声を学習しないアカショウビンでは、南西諸島の狭い範囲でも生息地による音響環境の違いに適応することで、個体群の隔離がおきている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リュウキュウアカショウビンの巣立ちに雛に衛星追跡GPSを装着し、移動分散と配偶者選択の過程を解明する予定であった。しかし使用を予定していたアルゴスシステムを用いた最新超小型追跡用のデバイスが、日本の電波法の基準をクリアーできず使用不可能となった。このためGPSデータロガーを用いることになった。衛星追跡GPSを使用すれば、研究室に居ながらにして測位データが得られたのであるが、GPSデータロガーの場合、再捕獲をしデバイスを取り外した上でコンピュータを用い位置データを得なければならない。そのため再捕獲の可能性が極めて低い雛に、再捕獲が必要なGPSデータロガーを装着することはできない。つまり雛の分散過程の追跡、および配偶者の解明は諦めざるを得なかった。そこで、繁殖個体の土地執着性や配偶者執着性を足輪を用いて確認し、同類交配、異系交配による配偶成功を経年的に比較する現実的な方法を採用することとした。アルゴスシステムを使うデバイスよりも、GPSデータロガーは安価であるため、より多くの個体に装着が可能になる。そのほかの点に関しては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
琉球列島の様々な島で繁殖するつがいの雌雄各 20 個体を捕獲、個体識別し、形態計測、採血を行なう。基礎データとして翼長、尾長、フショ長、嘴峰長、嘴高長、嘴幅長、前頭長、体重を計測し比較する。ミトコンドリアDNA を用いて系統推定、分岐年代の推定、系統地理学的解析を行う。さらに遺伝的構造を解明にするために、マイクロサテライトDNA により個体群間の遺伝距離、遺伝子流動の程度やその方向性を明らかにする。特につがいの雌雄が由来する系統を明らかにすることで、鳴き声に対する反応実験と合わせ、系統同類交配があるかどうか検討する。個体識別された個体のさえずりを録音する。録音されたアカショウビンの鳴き声を声紋として視覚化し、時間と周波数特性などを解析する。さえずりと同時に録音される環境騒音についても同様に解析を行なう。個体識別した個体に対し、同じ島の他個体のさえずりと他の島の他個体のさえずりを聞かせるプレイバック実験を行なう。環境騒音の有無が、他個体のさえずりに対する反応性に影響しているかどうかを明らかにすることが重要である。反応するまでの時間、声を流すスピーカーまでの接近距離、鳴き返し時の声の強さなどを記録する。アカショウビンの繁殖生態を解明する。繁殖経過を追跡し、産卵日、一腹卵数、孵化数、巣立ち数などの基礎的な繁殖生態を収集する。アカショウビンは渡り性であり、繁殖地への定着過程を解明することは鳴き声の局所環境適応を考える上で重要である。そこで成鳥つがいにGPSデータロガーを装着し、越冬地と繁殖地への帰還の際にどのような場所を通過するかを解明する。通過地点の環境の評価を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究では、リュウキュウアカショウビンの巣立ちに雛に衛星追跡GPSを装着し、移動分散と配偶者選択の過程を解明する予定であった。しかし使用を予定していたアルゴスシステムを用いた最新超小型追跡用のデバイスが、日本の電波法の基準をクリアーできず使用不可能となった。このためGPSデータロガーを用いることになった。アルゴスシステムを使うデバイスよりも、GPSデータロガーは安価であるため次年度使用額が生じた。より多くの個体にGPSデータロガーを装着することとしたが、使用不可能であることが判明したのが2016年4月であったため計画の微調整が間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
衛星追跡GPSを使用すれば、研究室に居ながらにして測位データが得られたのであるが、GPSデータロガーの場合、再捕獲をしデバイスを取り外した上でコンピュータを用い位置データを得なければならない。そのため再捕獲の可能性が極めて低い雛に、再捕獲が必要なGPSデータロガーを装着することはできない。そこで、繁殖個体の土地執着性や配偶者執着性を足輪を用いて確認し、同類交配、異系交配による配偶成功を経年的に比較する現実的な方法を採用することとした。再捕獲のための野外調査を当初計画よりも調査地を増やし、長期間、重点的に行なう。
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Research Products
(3 results)