2016 Fiscal Year Research-status Report
沿岸海域におけるマイクロプラスチック汚染が底生生物に与える影響の実験的検証
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16K14801
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仲岡 雅裕 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90260520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 底生生物 / 化学汚染 / 野外定量調査 / 室内実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、沿岸域におけるマイクロプラスチック汚染の実態とその底生動物(マクロベントス)への影響を、野外調査、室内実験、化学分析の統合的利用により解明する。 本年度は、まず日本および世界各地の海岸域におけるマイクロプラスチック量について、顕微鏡を用いた観察および既存研究のレビューにより解析を行った。その結果、各地の海岸におけるマイクロプラスチック現存量には大きな変異があることが明らかになった。また、マイクロプラスチックの形状も場所により大きく異なった。特に漁業活動が盛んな海域では繊維状のマイクロプラスチックが多く、漁網等の廃棄物が由来であることが示唆された。 室内飼育実験によるマクロベントスに対するマイクロプラスチック汚染の影響評価については、モデル生物であるムラサキイガイを対象に、マイクロプラスチック濃度および水温を操作した長期実験(12週間)を実施した。マイクロプラスチックの影響は、ムラサキイガイの濾過量、呼吸量、相対成長量、偽糞生産量などに認められたが、その効果の方向性は目的変数により異なった。また、一部の目的変数については、水温が高いほどマイクロプラスチック濃度の負の効果が増長するという相互作用も認められた。 マイクロプラスチック中のPOPs成分がマクロベントスに与える影響の評価については、実際に野外に分布するPOPs (残留性有機汚染物質)を利用した分析法の開発を検討した。東京湾にポリエチレン製シートを係留し、海水中から疎水性有機化合物を吸着させ、二枚貝への取込実験の際に曝露源とするプラスチックの材料を試作した。4週間後のPCBsの39同族異性体の合計濃度は96 ng/g、個々の同族異性体濃度は数ng/gとなった。このシートを裁断、微細に砕くことにより、29年度の二枚貝による取込実験に使用できる目途をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外におけるマイクロプラスチック汚染の実態評価について、顕微鏡観察による簡易的な定量方法を確立し、マイクロプラスチック量および形状の地域変異を評価することができた。しかし、顕微鏡観察では0.1mm以下の特に小さいマイクロプラスチックの正確な定量が難しいことも判明したため、今後、プラスチックの自然蛍光を利用した定量方法など、他の方法の併用も検討することにしている。 飼育実験によるマイクロプラスチックの影響評価についても、モデル生物であるムラサキイガイを用いて室内実験系で有意な影響を検出することに成功した。今後、対象生物を広げるとともに、さらに野外の複雑な環境条件を再現した操作実験が実施可能となっている。 POPsを含む化学的汚染の影響評価については、当初、市販されている有機物質を利用する予定であったが、これには実験排出物の処理に多大な労力と費用がかかることが課題であった。これに対して、実際に野外に分布するPOPsを吸着させて実験に利用する手法によりこの課題を解決することができる見通しが立った。この点は、当初の計画以上の展開である。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査については、今年度と条件の異なるサイトで実施するとともに、今年度開発したマイクロプラスチック小型画分の定量方法も併用し、その汚染状態のより詳細な解明を行う。 室内飼育実験については、今年度の野外調査で特にマイクロプラスチックが少なかったサイトの生物が、今後の汚染に対する感受性も高いことが予想されることから、実際にマイクロプラスチック量が少なかった厚岸サイトのマクロベントスを主体に、すでに汚染が進行している東京湾や大阪湾等の都市域周辺海域の同種あるいは近縁種と比較する形で実験を実施する。特に、今年度開発した野外で吸着させたPOPsを含むマイクロプラスチックを用いた実験を進め、対象生物の摂食量、成長量、生存率、繁殖量への影響を評価する。 化学分析については、野外のマイクロプラスチック中、および飼育実験生物がマイクロプラスチックの摂食を通じて取り込んだPOPsについて化学成分を実施する。 以上の結果を通じて、沿岸域におけるマイクロプラスチック量の変異をもたらす要因を理解するとともに、マクロベントスに対するマイクロプラスチックの影響について、その変異の形成機構を解明する。さらに、水温とマイクロプラスチック影響の相互作用を調べる実験結果を踏まえ、今後の地球温暖化がマイクロプラスチック汚染の負の効果をどのぐらい悪化させるかについて予測評価する。
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Causes of Carryover |
当初の本年度の調査項目のうち、POPsを用いた飼育実験については、環境負荷が少なく、かつ汚染物質処理費用が少なくて済む手法(野外海域のPOPsを浸漬したマイクロプラスチックの作成方法)の開発を待って行うことにした。そのため、本研究にかかる経費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した経費は、POPsを浸漬するためのプラスチック素材、プラスチックを破砕してマイクロプラスチックにするための粉砕機の購入、およびPOPsを計測するための化学薬品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)