2016 Fiscal Year Research-status Report
熱帯雨林の食物網の安定性:昆虫標本の放射性炭素・アミノ酸同位体分析による解明
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16K14811
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陀安 一郎 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 教授 (80353449)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食物網 / 放射性炭素 / アミノ酸 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マレーシア・サラワク州ランビルヒルズ国立公園で現在まで採集されている昆虫標本を用い、その放射性炭素とアミノ酸窒素同位体の分析を行う。大気中二酸化炭素の放射性炭素濃度は冷戦期大気圏核実験の影響により増加し、1963年の禁止条約締結以降、急激に減少している。この傾向は植物による当年の光合成産物にも反映されている。したがって、昆虫の放射性炭素濃度を測定することで、その昆虫の体を構成する炭素が何年前の光合成産物であるのか推定できる。またアミノ酸窒素同位体はバルク分析にくらべてより高い精度で食物連鎖における動物の栄養段階を推定することが出来る可能性がある。本研究ではこれらの分析により、種ごとの食物年齢と栄養段階を求め、その経年変化を明らかにする。さらに、これら食物網に関する情報と、気温や降水量などの物理環境や一斉開花の状況との対応を調べ、食物網の安定性に非生物・生物的な要因が与える影響を明らかにする。本年度は1993年から採集済みの昆虫試料の収集とその整理を進めた。特にハナバチの仲間に着目して、放射性炭素同位体濃度を測定した。その結果、このハナバチの仲間の放射性炭素濃度は、大気二酸化炭素の放射性炭素濃度の減少を反映していることがわかった。また、国際土壌動物学会において、熱帯の昆虫の同位体組成の変動要因に関する発表をおこなった。さらに現在の大気中二酸化炭素に含まれる放射性炭素含量測定のため、二酸化炭素ガス採取システムの構築も合わせて開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度としては、予想通り大気二酸化炭素の放射性炭素の変化に対応する結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、植食者だけではなく捕食者、雑食者等の食性をもつ昆虫標本も対象にしていく。またH29年度にも新たに試料を採集し、近年の試料とする。これらの試料について、放射性炭素、アミノ酸同位体分析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
一括して分析を行った方が時間的経済的にも効率がよい。そのため、次年度にまとめて分析することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昆虫、特に捕食者、雑食者についてアミノ酸同位体、放射性炭素同位体分析を一括して行う。
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